トピエレツ
トピエレツ · ウトピェツ · ヴォドニーク
スラヴの伝承で、溺れて死んだ人の魂がなる水の霊。死んだ場所の水に留まり、人を沼や湖に引き込む。チェコの水の主ヴォドニークも同じ系列の霊で、溺死者の魂を壺に閉じ込めて水底に並べるとされる。
解説
概要
トピエレツ(ウトピェツとも)は、スラヴ神話の民間伝承に語られる水の霊で、水に溺れて死んだ人の魂とされる。自らの死の場である水に留まり、人を沼や湖へ引き込み、静かな水辺に立つ家畜を殺すという。チェコやスロヴァキアの水の主ヴォドニークも、同じ系列の霊として扱われる。
伝承
溺れて死んだ人の魂は、死んだ場所の水のなかに留まり続けるとされた。トピエレツは水辺に近づいた人や家畜を引き込み、命を奪う。
チェコとスロヴァキアのヴォドニークは、緑の服を着た小男の姿で語られる。溺れた者の魂を壺に閉じ込めて水底に並べておき、蓋を開けてやれば魂は解き放たれるという。
正午や真夜中には水に入ってはならない、聖ヨハネの日(6月24日)より前には泳いではならない、といった禁忌も伝わる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
ヴォジャノイ、ルサールカとともに水の霊の系列をなし、沼の霊ボロトニクと住む場所を分ける。正しく葬られなかった死者がなるウピルと同じく、尋常でない死を遂げた者の霊である。
文化的足跡
ポーランドの農村では、19世紀末から20世紀初めにかけても溺死者の水の霊が語られていた。レイモントのノーベル賞受賞作『農民』では、村人たちが伝承を語り合う場面に、女性形のトピェリツァが現れる。チェコのヴォドニークは、エルベンのバラード集『花束』(1853年)の一篇や、ドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』(1901年)に登場する。
なおスラヴの民間伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。