トヒル
トヒル · トヒール · Tohil
キチェ・マヤの守護神で火・戦・太陽・雨を司る。『ポポル・ヴフ』では七つの洞窟でキチェの祖先に与えられ、サンダルを打ち合わせて火を作り、その見返りに人身供犠を求めた。太陽が昇ると石に変わった。
解説
概要
トヒル(トヒルとも綴る)は、火のマヤの神である。メソアメリカの後古典期後期におけるキチェ・マヤの神格であった。
スペイン征服の時点で、トヒルはキチェの守護神であった。後古典期に高地マヤ文化に影響を与えたトルテカの万神殿に含まれていた。
その主要な職能は火の神であり、また戦神、太陽神、雨の神でもあった。山とも結びつけられ、戦・供犠・糧の神であった。
ポポル・ヴフにおける役割
キチェの叙事詩『ポポル・ヴフ』において、最初の人々が創造されたのち、彼らは神話上のトゥーラン——「七つの洞窟の場所」——に集まって神を受け取った。
キチェの祖先はトヒルを受け取り、他の部族もそれぞれの神を受け取った。すなわちトヒルは、キチェという集団の成立とともに与えられた神である。
火の授与。 世界はまだ暗く、寒かった。トヒルはサンダルを打ち合わせて火を作った。他の部族が火を求めると、トヒルはその見返りとして「脇の下と腰を差し出すこと」——すなわち人身供犠——を要求した。
火と引き換えに人身供犠を求めるという場面が、この神を規定する。文明の恵みが、犠牲を代償として与えられる。
太陽の到来
長い夜ののち、初めて太陽が昇ったとき、トヒルと他の部族の神々は石に変わった。以後、神々は石像として祀られる。
神が石になるという結末は、崇拝の対象が像であることの説明である。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
キチェの都クマルカフには、トヒルの神殿があった。アウィリシュ、ハカウィツの神殿とともに、都の中心を構成していた。
関わる神格・伝承
キチェの守護神。アウィリシュ、ハカウィツと三神をなす。ケツァルコアトルと結びつけられることがある。
文化的足跡
グアテマラのクマルカフ(ウタトラン)遺跡には、トヒル神殿の基壇が今日も残る。