シンハムカー
シンハムカー · センゲ・ドンマ · 獅子面ダーキニー
雪獅子の頭を持つゾクチェンの智慧のダーキニー。その咆哮は分別思考を散らし、裸形は分別からの自由を表す。パドマサンバヴァの師のダーキニーや配偶の化身とされ、呪術的な攻撃を退ける本尊として修される。
解説
概要
シンハムカー(チベット語センゲ・ドンマ)あるいはシンハヴァクトラは、チベット仏教において、獅子面のダーキニーとして知られるゾクチェンの伝統の智慧のダーキニーである。雪獅子の頭を持つ猛々しいダーキニーとして表される。その口は咆哮する姿で描かれ、抑えのきかない怒りと歓喜の笑いを象徴し、咆哮は分別思考を散らす。裸形は、彼女自身が分別思考から完全に自由であることを表す。
信仰
ウッディヤーナでパドマサンバヴァを教えた主要なダーキニーであるグヒヤジュニャーナ・ダーキニー、あるいはパドマサンバヴァの配偶の一人マンダーラヴァー、あるいはサンワ・イェシェの化身、顕現とされる。成就した女性の修行者を表す。瞑想の本尊としての主な働きは、呪術的な攻撃を退けることである。
図像と象徴
ヒマラヤ美術資料館の学芸員によれば、シンハムカーは、青黒い身色で一面二臂、赤く丸く睨む三つの目を持ち、牙をむき舌を巻く姿で観想される。右手は金剛杵の印のある鉞刀を天に掲げ、左手は血に満ちた髑髏杯を胸に当て、左の肘に三叉のカトヴァーンガを抱える。橙色の髪と眉と髭は逆立ち、五つの乾いた首の冠と、血の滴る五十の首の首飾りをつけ、五種の骨の飾りと虎皮の裳をまとう。左脚で立ち、右脚を引き上げて、本来の覚醒の燃えさかる炎のなかに立つ。
ジョン・レイノルズによれば、シンハムカーは、身色と持物のほかは彼女に似た四人のダーキニーの眷属に囲まれ、東の白いブッダ・シンハムカーは状況を鎮め癒す働きを持つ。
主画像は、パドマサンバヴァを頭上にいただくシンハムカーのタンカである。
系譜と関係
パドマサンバヴァの師のダーキニーや配偶の化身とされ、ニンマ派のゾクチェンの伝統に属する。
なおチベット仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。