シンハムカー
シンハムカー · センゲ・ドンマ · 獅子面ダーキニー
雪獅子の頭を持つゾクチェンの智慧のダーキニー。その咆哮は分別思考を散らし、裸形は分別からの自由を示す。パドマサンバヴァの師のダーキニーの化身とされ、呪術的攻撃を退ける本尊。
解説
概要
チベット仏教において、シンハムカー(チベット語センゲ・ドンマ)あるいはシンハヴァクトラは、獅子面のダーキニーとしても知られる、ゾクチェンの伝統の智慧のダーキニーである。
雪獅子の頭を持つ猛々しいダーキニーとして表される。その口は咆哮する姿で描かれ、制御されない怒りと歓喜の笑いを象徴する。その咆哮は分別思考を散らす。裸形は、彼女自身が分別思考から完全に自由であることを象徴する。
教義上の位置
グヒヤジュニャーナ・ダーキニー(ウッディヤーナにおけるパドマサンバヴァの主要なダーキニーの師)、あるいはマンダーラヴァー(その配偶の一人)、あるいはサンワ・イェシェの化身あるいは顕現と考えられる。成就した女性の修行者を表す。
瞑想の本尊としての主要な機能は、呪術的な攻撃を退けることである。
ジョン・レイノルズとジョン・ラッシュによれば、インドの女神プラティヤンギラー、エジプトの女神セクメトと対応する。ただしこれらは類型上の比較であり、系統関係を示すものではない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、シンハムカーのタンカである。
青黒い身色で、雪獅子の頭を持ち、右手に鉞刀、左手に髑髏杯を持ち、左肩にカトヴァーンガを担う。髑髏の冠と首飾りをつけ、火炎に囲まれて踊る。
獅子の頭という造形が、この尊格を規定する。人の身体に獣の頭を持つダーキニーは、動物の力を悟りの力に転じたことを示す。
関わる神格・伝承
パドマサンバヴァの秘密の姿の一つとされる。ニンマ派のゾクチェンの伝統に属する。
獅子頭の女神という点で、エジプトのセクメト、メンヒト、ヒンドゥーのプラティヤンギラーと造形を共有する。
文化的足跡
チベット仏教において、シンハムカーの修法は呪詛や魔障を退ける護身の実践として、今日も行われている。
なおチベット仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。