シャティカトゥ
シャタカト · Shatiqatu · Shaʿtiqatu
ウガリットの『キルタ物語』だけに登場する癒し手で、病に倒れた王キルタのためにエールが泥から造った。名は「病を去らせる女」の意。小さな女神と解されることが多いが、祭儀文書に名がなく、物語のために生み出された人物とみる説もある。
解説
概要
シャティカトゥ(ウガリット語 šʿtqt)は、ウガリットの『キルタ物語』にだけ登場する癒し手である。病に倒れた王キルタのために、エールが泥をこねて造り出した。名は「(病を)去らせる女」と訳され、災いや病や不運を除くことを指すアッカド語シュートゥクと語源的に関わる。今日の研究者の多くは小さな女神と解するが、悪霊や天使、魔神、ゴーレムに似た超自然の存在、あるいは人間とみる説もある。
神話・物語
キルタが女神アーシラトへの誓いを破って重い病に倒れると、エールは神々に「誰がこの病を取り除くのか」と七度問いかけるが、誰も答えない。そこでエールは自ら泥をこね、病を追う者としてシャティカトゥを形づくり、「病を取り除け、痛みを追い払え」と命じる。シャティカトゥは町々の上を飛んでキルタのもとへ至り、その汗を洗い流して死を追い払う。キルタは起き上がり、食べ物を求める。
図像と象徴
シャティカトゥを表した像は知られておらず、本サイトも主画像を掲げない。
信仰
癒しの女神とも、悪霊を祓う者とも解され、古代の近東ではこの二つの領域は結びついていた。エールが造ったことは、メソポタミアのエンキと同じく、エールが魔除けの呪術を担う神であったことを反映するとも考えられる。
供物の一覧などの祭儀文書に名がないことから、実際には崇拝されず、物語のために書記たちが生み出した人物だったとする見方がある。一方で、治癒の儀礼のために陶工がシャティカトゥの小像を作り、物語の創造の場面をなぞる手順が行われた可能性も指摘されている。パオロ・マッティアエは、今日のシリア各地の円筒印章に繰り返し現れる女性のスフィンクスがシャティカトゥにあたる可能性を論じている。
系譜と関係
エールが造った存在で、親子の系譜には置かれない。