キルタ
キルタ · ケレト · Keret
ウガリットの詩に歌われるフブルの王。七人の妻と子をすべて失い、エールの夢の指示に従って遠征して妻を得たが、アーシラトへの誓いを忘れて病んだ。エールが泥から作った存在に癒されたが、子が退位を迫るところで粘土板は途切れる。
解説
概要
『キルタ物語』(『ケレト叙事詩』とも)は、フブルの王キルタの生涯を歌うウガリットの詩である。
なお本サイトの分類では、フェニキア/ウガリットの体系に含めて扱う。
物語
家族の喪失。 キルタは七人の妻を得たが、いずれも死に、子も失った。ただ一人残された。
エールの夢。 泣きながら眠ったキルタの前に、エールが夢に現れた。
「なぜ泣くのか。銀と金が欲しいのか」と問うたが、キルタは「子が欲しい」と答えた。
遠征の指示。 エールは、犠牲を捧げ、軍を率いてウドゥムの地へ行き、王フリヤの娘フライを妻に求めよと命じた。
行軍。 キルタは指示に従い、大軍を率いて進んだ。
途上、アーシラトの聖所で「妻を得たら銀と金を捧げる」と誓った。
婚姻。 ウドゥム王は財貨を差し出して和議を求めたが、キルタは娘のみを求めた。フライを得て帰った。
誓いを忘れる。 しかしアーシラトへの誓いを果たさなかった。
病。 女神の怒りによりキルタは病んだ。
シャティカトゥ。 エールが泥からシャティカトゥという存在を作り、これがキルタを癒した。
子の反逆。 快癒したキルタに対し、子ヤシブが「病んだ王は退くべきだ」と迫った。キルタは子を呪った。
中断。 粘土板はここで途切れる。
王権の主題
『キルタ物語』は、王権をめぐる詩である。
王も死ぬ。 王が病み、子が退位を迫る。神の子とされる王も、人としての弱さを免れない。
誓いを果たさぬ罪。 病の原因が、神への誓いを忘れたことにある。
王と神の契約。 王権が神との契約に基づくという観念が、この物語に表れている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、鴨形の容器である(ウガリット出土、ルーヴル美術館蔵 AO14779)。
関わる神格・伝承
エールの加護を受けた。アーシラトへの誓いを破った。シャティカトゥに癒された。
文化的足跡
『キルタ物語』は、『バアル神話』『アクハト物語』と並ぶウガリット文学の三大作品の一つである。