サラーキア
サラキア
ローマの海水の女神で、ネプトゥーヌスの妃。もとは湧き水の精霊であったが、ギリシアの神話が流入するなかで海の女神へと性格を変えた。
解説
概要
サラーキア(Salacia)は、ローマの海水の女神であり、ネプトゥーヌスの妃とされる。ギリシアのアムピトリーテーと同一視されるが、両者の来歴は重ならない。ネプトゥーヌスがもともと湧き水と灌漑の神であったのと同じく、サラーキアも本来は泉から湧き出る水にかかわる精霊であった。夫がポセイドーンと重ねられて海の支配者になったのに伴い、その妃もまた海の女神へと位置づけを変えた。ローマの神格がギリシアの物語を受け入れる過程が、この一柱によく現れている。
神話・物語
固有の神話は伝わらない。サラーキアについて語られることのほとんどは、アムピトリーテーの物語をラテン語で言い換えたものであり、トリートーンの母とされるのもその一環である。
名の解釈には古代から二つの流れがある。一つは salum(外海、うねり)に結びつけて海水そのものと見る解釈。もう一つは salacitas(好色)に結びつけるもので、この語源説からサラーキアを娼婦の守護神とする説明も生まれた。ただし後者は語呂合わせの域を出ず、祭祀の実態を裏づける資料はない。ローマの神名解釈が、しばしば語源遊びとして行われたことを示す例である。
図像と象徴
サラーキアの名を明示した古代の作例は乏しい。ローマの海の情景を描くモザイクや壁画に現れる海の女王は、図像としてはギリシアのアムピトリーテーの型をそのまま用いており、両者を区別する手がかりはない。ヘルクラネウムの「ネプトゥーヌスとアムピトリーテーの家」のガラスモザイクが、その典型である。本項では、ギリシア側の神格の像を借りることを避け、主画像を置いていない。
系譜と関係
夫ネプトゥーヌス。インテルプレタティオ・グラエカの逆方向、すなわちローマの神をギリシアの神話に当てはめる作業のなかでアムピトリーテーと結ばれた。ウェニリア(凪いだ海の女神)と対にして語られることもあり、荒れる海と凪ぐ海を二柱に分ける配置が想定される。
文化的足跡
太陽系外縁天体の一つに、この女神の名が与えられている。海王星の名がネプトゥーヌスに由来することにちなむ命名である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。