レファイム
ラピウマ · Rephaim · Rapiuma
旧約聖書で背の高い先住民を指すと同時に、シェオルの死者の霊をも指す語。ウガリットでは「ラピウマ」として死んだ王たちの霊を指し、即位や葬礼の宴に招かれた。旧約聖書ではこの祖先の霊が、滅ぼされた異民族に読み替えられている。
解説
概要
レファイム(ヘブライ語 רְפָאִים)は、ヘブライ語聖書で二つの異なる意味に用いられる語である。一つは、イスラエル以前にカナンやヨルダン川東岸に住んでいたとされる背の高い人々、つまり巨人の一族。もう一つは、死者の国シェオルに住む死者の霊である。ウガリットには同じ語根の「ラピウマ」があり、死んだ王たちの霊を指した。
登場する物語
ヘブライ語聖書のレファイムは、まず先住の巨人として現れる。『申命記』3章は、バシャンの王オグを「レファイムの生き残り」とし、その鉄の寝台は長さ九キュビト(約4メートル)あったと記す。『創世記』14章では、王たちの連合軍が東岸でレファイムを打ち破る。エルサレムの南西には「レファイムの谷」の地名がある。
一方で、詩や預言書のレファイムは死者の霊である。『イザヤ書』14章では、陰府に下ってくるバビロンの王を、かつての地の王たちの霊が立ち上がって迎える。26章14節は「死者は生き返らず、レファイムは起き上がらない」と歌い、死者の霊が力をもたないことを強調する。
ウガリットのラピウマは、死んで神に近い存在となった王の霊である。先王ニクマッドゥの葬礼の文書(KTU 1.161)は、最後の王アンムラピの即位にあたって、歴代の王の名を呼び、太陽の女神シャプシュとともに下ってくるよう求める。ラピウマを宴に招く詩も残っている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、巨人ウージュ(聖書のオグ)と預言者モーセ、イエス、ムハンマドを描いたイスラーム美術の写本画(ハリーリ・コレクション)である。オグの巨人伝承は、ユダヤ教の伝承を経てイスラームの物語にも受け継がれた。
関係する神格
ラピウマは、家ごとに祀られた祖先の霊を指すイリブの観念と重なる。旧約聖書は死者に伺いを立てることを禁じ(『申命記』18章)、祖先の霊として祀られていた存在を、滅び去った先住の民として描き直したと考えられている。『創世記』6章のネフィリムと結びつけられることもあるが、別の語であり、直接の関係は確かめられていない。
文化的足跡
巨人と死者の霊とがなぜ同じ語で呼ばれるのかは、長く論じられてきた。ウガリット文書の発見によって、レファイムが本来は王家の祖先の霊を指す語であり、聖書の巨人像はそこから派生した、あるいは意図的に読み替えられたものとする見方が広まった。