イリブ
イリブ · エニ・アッタンニ · Ilib
ウガリットの原初の神格で、名は「父なる神」と解される。神々の一覧と供物の一覧において至高神エールよりも前に置かれる。同時に祖先の霊をも指す一般語であり、死んだ王が神になるという観念を含む。
解説
概要
イリブ(エニ・アッタンニとしても知られる)は、原初の神格とみなされたとみられるウガリットの神である。
一般的な語としては、この語は祖先の霊をも指したようである。神と観念は、おそらく互いに結びついていた。
イリブの役割は、フルリの宗教におけるアラル、あるいはメソポタミアにおけるエンリルの祖先——たとえばエンメシャッラ——といった神格の役割と比較されてきた。
なお本サイトの分類では、フェニキア/ウガリットの体系に含めて扱う。
名
「イリブ」は「イル」(神)と「アブ」(父)の複合とする解釈が有力である。
「父なる神」あるいは「神なる父」。 どちらとも読める。
神と祖先。 この曖昧さが、この神格の性格に対応する。至高の神の父であり、同時に個々の家の祖先でもある。
神々の一覧の筆頭
ウガリットの神々の一覧(KTU 1.47、1.118)において、イリブは最初に置かれる。
エールより前。 至高神エールよりも前に記される。
供物の一覧でも。 犠牲の一覧においても、最初に供物を受ける。
最も古い者が最初。 序列が古さによって定まる。
祖先崇拝
ウガリットにおいて、祖先の霊は「イリブ」と呼ばれた。
家の祖先。 各家がその祖先を祀った。
王の祖先。 王家においては、歴代の王の霊が祀られた。ラピウマ(レファイム)と呼ばれる。
神と祖先の連続。 死んだ王が神になるという観念が、この語に含まれる。
旧約聖書との対比。 旧約聖書は祖先崇拝を厳しく禁じる。カナンの宗教との差異が、この点に現れる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
エールより前に置かれる。レファイム(祖先の霊)と結びつく。フルリのアラルと比較される。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。ウガリット宗教の研究において言及される。