ノイシュ
ノイシ · ナオイシュ · Noisiu mac Uisliu
アイルランド神話のアルスターの若い戦士。デアドラと駆け落ちしてスコットランドへ逃れ、王の裏切りによって討たれた。
解説
概要
ノイシュ(Naoise、古アイルランド語 Noísiu)は、アルスター物語群の『ウシュネハの子らの流離』に登場するアルスターの戦士である。ウシュネハの子として、弟アルダンとアンレとともに「ウシュネハの子ら」と呼ばれた。デアドラの恋人であり夫にあたる。
美しい若者にして狩人、そして歌い手として、王コンホヴァル・マク・ネサの宮廷に仕えていた。
神話・物語
デアドラは、鴉が獲物をくわえて雪に降りるのを見て、鴉の羽のような髪、雪のように白い肌、血のように赤い頬の男を愛したいと語った。乳母レヴォルハムは、それはノイシュのことだと答える。
手引きによって二人は出会い、恋に落ちた。彼女がすでに王のものと定められていることを知りながら、彼は駆け落ちを選ぶ。弟たちも兄に従い、四人はアイルランドを追われてスコットランドへ渡った。地元の王が彼を殺してデアドラを得ようと図るたびに、一行は居を移さねばならなかったと稿本は伝える。それでも狩りと漁の日々は幸福なものとして描かれ、ロッホ・エティヴがその地の一つとして名を残す。
王の使者として現れたのはフェルグス・マク・ロイヒであった。赦しの言葉と、フェルグス自身の身の安全の保証。ウシュネハの子らは、エウァン・ワハで王とともに食事をするまで何も口にしないと誓って帰路につく。ところがフェルグスは饗宴の招きを断れないというゲッシュを突かれ、一行から引き離された。
エウァン・ワハに着いた一行に、王は密偵を送る。デアドラの美しさが衰えたと偽って報告した乳母のあとに、第二の密偵ゲルバンが放たれた。窓からのぞく男を見つけたノイシュは、手にしていた黄金の駒を投げつけてその片目を潰す。それでも密偵は戻り、彼女は変わらず美しいと告げた。
王は赤枝の館を襲わせた。ノイシュと弟たちは、少数の赤枝の戦士に助けられて奮戦する。しかし王が忠誠の誓いを持ち出すと援護は途絶え、デアドラは引き離された。エオガン・マク・ドゥルタハトの投じた槍がノイシュを貫き、弟たちもほどなく討たれる。
図像と象徴
古代の図像はなく、当サイトも主画像を掲げない。近代の絵画や舞台では、雪と鴉を背にした若い戦士として描かれることが多い。
彼に結びつく標識は、投げつけられた黄金の駒である。武器ではなく盤上の駒で密偵の目を潰すという細部は、彼が戦士でありながら宮廷の若者でもあることを示している。もう一つは歌声で、稿本は彼が歌うと牛の乳の出が増え、聞く者は心を奪われたと伝える。
系譜と関係
父はウシュネハ、弟にアルダンとアンレ。妻はデアドラ。稿本によっては、二人のあいだに息子ガイアルと娘アイヴグレネがあり、マナナン・マクリルのもとで養われたとする。
カフバズの予言に言う「彼女ゆえに国を追われるアルスター最良の三戦士」とは、この三兄弟のことである。予言は、彼らが逃れることによってではなく、帰ってきて殺されることによって成就した。安全の保証を信じて帰国したという一点が、この兄弟の運命を決めている。
文化的足跡
近代アイルランドの戯曲群において、この人物はしばしば理想化された若さの象徴として造形されてきた。J・M・シング『悲しみのデアドラ』(1910年)では、老いた王と対置される若い恋人として、老いるより先に死ぬことの意味が正面から問われる。スコットランド西岸のグレン・エティヴ一帯には今も「ウシュネハの子らの家」と伝えられる場所があり、亡命の地としての記憶が地形に結びついて残っている。