メヘト・ウレト
メフトゥルト · メヘト・ウェレト · Mehet-Weret
「大いなる洪水」を意味する天空と原初の水の女神。時の始まりに太陽を産み、角のあいだに日輪を持つ牝牛として描かれる。太陽を産む者であり太陽が渡る水でもある。「ラーの眼」の一つ。
解説
概要
メヘト・ウレト(Mehet-Weret、メフトゥルト)は、古代エジプトの宗教における天空の神格である。その名は「大いなる洪水」を意味する。
『ピラミッド・テキスト』に言及される。古代エジプトの創世神話において、時の始まりに太陽を産み、美術においては角のあいだに日輪を持つ牝牛として描かれる。
ネイト、ハトホル、イシスといった女神——いずれも類似の性質を持つ——と結びつけられ、彼女たちと同じく「ラーの眼」と呼ばれえた。
職能
メヘト・ウレトは主として、その身体的な特徴から「天の牝牛」あるいは「牝牛の女神」として知られる。
原初の水の擬人化でもある。名の「大いなる洪水」は、天を満たす水を指す。エジプトの宇宙観において、太陽は天の水の上を舟で渡る。その水そのものが、この女神である。
太陽を産む者であり、太陽が渡る水でもある。産む者と渡られる場所が同じであるという構造は、天の女神ヌト——太陽を呑み、産む——と共通する。
図像と象徴
固有の図像は存在するが、本サイトは主画像を掲げない。角のあいだに日輪を戴き、首に飾りをつけて伏す牝牛として表される。
『死者の書』の挿絵において、メヘト・ウレトは葦の茂みから現れる牝牛として描かれる。ツタンカーメンの墓からは、この女神を表す木製の牝牛の寝台が出土している。
関わる神格・伝承
ネイト、ハトホル、イシスと結びつく。「ラーの眼」の一つ。
エジプトの牝牛の女神——ハトホル、バト、ヘサト、メヘト・ウレト——は、いずれも乳と養いに結びつき、しばしば互いに習合した。
文化的足跡
ツタンカーメンの葬送用寝台の一つは、メヘト・ウレトの形をとる。牝牛の四肢が寝台の脚となる意匠である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。