マーテ
マーテ · マフテ · ゼメス・マーテ
ラトビア神話で六十から七十の女神に適用された「母」の称号。大地の母、森の母、海の母、死者の母のほか、きのこの母、市場の母といった細かい領域にまで及ぶ。実際に信仰された神格か民謡の修辞かは議論がある。
解説
概要
マーテは、ラトビア語で「母」を意味する語で、ラトビアの民謡には「〜の母」と呼ばれる女神が六十から七十も現れる。大地の母、森の母、海の母、死者の母から、きのこの母、市場の母まで、暮らしのあらゆる領域にそれぞれの母がいる。一柱の女神が多くのことを司るのではなく、領域ごとに別々の母を置くところに、この信仰の特徴がある。
なお本サイトの分類では、バルト神話の体系に含めて扱う。個々の伝承が乏しく、称号として共有されるため群記事とする。
七十の母
ラトビアの民謡には、ゼメス・マーテ(大地の母)、メジャ・マーテ(森の母)、ユーラス・マーテ(海の母)、ヴェリュ・マーテ(死者の母)、ヴェーヤ・マーテ(風の母)、ウグンス・マーテ(火の母)など、数多くの「母」が歌われる。さらに、砂の母、道の母、庭の母、きのこの母、家畜の母、市場の母と、ごく細かな領域にまで母がいる。ロッテ・モッツによれば、宗教史家ハラルズ・ビエザイスは「マーテ」の称号を持つ存在を少なくとも七十挙げている。人々はそれぞれの仕事の前に、その仕事を受け持つ母に祈ったという。暮らしの場面が細かく分けられ、それぞれに守り手が置かれていたのである。森の母は、リトアニアのメデイナに対応する。
本当に祀られた女神か
これらの母がすべて実際に祀られた女神だったのか、それとも民謡の決まった言い回しにすぎなかったのかについては、議論がある。ラトビアの民謡ダイナスは定型の表現を多く用い、「〜の母」もその一つだとする見方がある。一方、民俗学者エルザ・コカレは、一部の母は疑わしいとしながらも、大地の母や死者の母など民謡に繰り返し現れる主な母は確かな存在とみている。すべての母が同じ重みを持っていたわけではない。
北欧でも、詩の婉曲な言い回しであるケニングから女神が推し量られた可能性が指摘されている(フリッグの侍女の項を参照)。表現が先にあったのか、信仰が先にあったのかという問題が、ここにも現れている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
文化的足跡
「マーテ」の体系は、ラトビアの民族文化の復興のなかで繰り返し取り上げられてきた。