カニヤー・クマーリー
カニヤー・クマーリー · デーヴィー・カニヤー・クマーリー · Kanya Kumari
インド最南端の地に祀られる少女の姿の女神。シヴァとの婚礼が鶏の鳴き真似で阻まれて以来、花婿を待ち続けている。処女であることが阿修羅を倒す力の源であり、婚礼のための米がそのまま砂になったと伝えられる。
解説
概要
カニヤー・クマーリー(「乙女」)は、インド亜大陸の最南端カニヤークマリに祀られる、少女の姿の女神である。大女神マハーデーヴィーが少女の姿をとったものとされ、パールヴァティーやラクシュミー、バドラカーリーの姿ともみなされる。シヴァとの婚礼が神々の計らいで果たされず、今も花婿を待ち続けていると語られる。未婚であることが、そのまま女神の力の源となっている。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
インドの南の果て
カニヤークマリは、インド亜大陸の最南端の地で、ベンガル湾とアラビア海とインド洋が出会う場所とされる。かつて英語で「コモリン岬」と呼ばれたが、その名は「クマーリー」に由来する。古くから、海での沐浴や、日の出と日の入りを眺める巡礼の地として知られてきた。
果たされなかった婚礼
女神はシヴァと結婚することになっていた。ところが神々は、女神が結婚すれば阿修羅バーナースラを倒す力を失ってしまうと考えた。バーナースラは、処女によってしか倒されないという恩寵を得ていたからである。そこで聖仙ナーラダが鶏の鳴き声を真似た。夜明けが来たと思ったシヴァは、婚礼の吉時を過ぎたとして引き返してしまった。女神は今も、花婿を待ち続けているという。婚礼のために用意された米はそのまま砂になり、カニヤークマリの海岸の砂が色とりどりなのはそのためだとされる。土地の風景が、物語を証しているのである。のちに女神はバーナースラと戦い、これを倒した。
乙女の力
「カニヤー」は乙女、処女を意味する。結婚しないことが、この女神の力の源である。インドには、少女を女神として拝むクマーリー・プージャーの伝統があり、ネパールで生き神とされる少女クマーリーも、この系譜に連なる。同じく結婚できずに待ち続ける女神として、サバリマラのマーリカプラッタンマがいる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カニヤークマリ女神の図である。女神の像の鼻飾りのダイヤモンドがあまりに強く輝くため、船がそれを灯台と見誤ったという伝承があり、そのため寺院の東の門は閉ざされている。
関わる神格・伝承
パールヴァティー、ラクシュミー、バドラカーリーの姿とされる。
文化的足跡
カニヤークマリはインドの主要な巡礼と観光の地であり、沖の岩の上には1970年に建てられたヴィヴェーカーナンダ岩記念堂が立っている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。