マーリカプラッタンマ
マーリカプラッタンマ · Maalikapurathamma
サバリマラのアヤッパン寺院に祀られる女神。独身を誓ったアヤッパンに求婚し、「初めて巡礼に来る者がいない年が来たら結婚しよう」と言われたが、毎年必ず初めての巡礼者が来るため永遠に待ち続けている。巡礼者が納める矢が、その待機を毎年確認する。
解説
概要
マーリカプラッタンマは、南インド、ケーララ州の山中にあるサバリマラのアヤッパン寺院の境内に、小さな祠を構えて祀られる女神である。巡礼者は本殿を参拝したのちに、この祠を訪れる。永遠の独身を誓ったアヤッパンに求婚し、果たされることのない約束を信じて待ち続けている女神として知られる。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
果たされない約束
伝承によれば、マーリカプラッタンマはアヤッパンとの結婚を望んだ。しかしアヤッパンは、生涯独身を貫く誓いを立てていた。そこでアヤッパンは、「初めてサバリマラに巡礼に来る者(カンニ・スワーミ)が一人もいない年が来たら、あなたと結婚しよう」と答えた。ところが、毎年必ず初めて巡礼に来る者がいる。約束は決して果たされることがなく、女神は今も待ち続けている。果たされるはずのない条件が、約束の形をとっているのである。同じく待ち続ける女神として、インドの南端に祀られるカニヤー・クマーリーがいる。
毎年の矢
初めて巡礼に来た者は、参道の途中のシャラムクッティという場所に矢を納める。納められた矢を見れば、その年にも初めての巡礼者がいたことが分かる。巡礼者の行いが、女神の待ち続ける物語を毎年確かめ直しているのである。
二つの起源
マーリカプラッタンマの起源には二つの伝承がある。一つは、アヤッパンに討たれた阿修羅の女マヒシーが、死後に美しい女として生まれ変わったとするもの。もう一つは、エーラヴァの一族チーラッパンチラの家の娘とするものである。後者は、かつて低い地位に置かれたエーラヴァの共同体と、サバリマラの信仰との結びつきを伝えている。
サバリマラをめぐる議論
アヤッパンが独身の神であることから、サバリマラの本殿では、10歳から50歳までの女性の参拝が伝統的に制限されてきた。2018年、インドの最高裁判所はこの制限を憲法に反するとする判決を下し、大きな社会的論争となった。本項はこの論争の是非には立ち入らない。なお、マーリカプラッタンマの祠にはこの制限はない。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
アヤッパンとの結婚を待ち続け、カニヤー・クマーリーと同じ型に属する。
文化的足跡
サバリマラの巡礼には毎年数千万人が参加し、世界最大級の巡礼の一つとなっている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。