ヤクママ
ヤクママ · 水の母 · Yacumama
アマゾンの川底に住む巨大な蛇で「水の母」。すべての水生動物の母とされ、漁師は漁の前にその許しを求める。近づく者を吸い込むため、水に入る前に法螺貝を吹いて姿を現させた。
解説
概要
ヤクママ(ケチュア語で「水の母」)は、アマゾンの熱帯雨林に住むと信じられる神話上の巨大な蛇である。伝説によれば、すべての水生動物の母とされ、百歩以内に近づいた生き物を吸い込む。身を守るため、地元の先住民は水に入る前に法螺貝を吹いた。ヤクママがいれば姿を現すと信じられたためである。
なおアマゾンの伝承は、本サイトの分類ではアンデス(インカ)の体系に含めず「その他」に置く。
伝承
ヤクママは川の底、とりわけ川の合流点や深い淵に住む。アナコンダの姿で描かれるが、その大きさは通常の蛇をはるかに超える。
水の母であり、魚と川の動物の守護者である。漁師は漁の前にヤクママに許しを求め、取りすぎを避ける。
対になる存在としてサチャママ(「森の母」)がある。サチャママは陸の巨大な蛇で、動かずに木のように見え、その周りに動物が集まる。ヤクママが水、サチャママが森を司る。
ボアの一種ヤクママ(Eunectes murinus、オオアナコンダ)の名は、この伝説の蛇に由来する。
図像と象徴
固有の古い図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この存在を規定するのは、母という位置である。水生動物の母であり、漁師はその許しを得て子(魚)を取る。取りすぎれば母の怒りを買う。資源の管理が、母への敬意として制度化されている。
アンデスのアマル——地下と湖底の蛇——と、水の蛇という主題を共有する。アマルが宇宙論的な存在であるのに対し、ヤクママはより日常の漁と結びつく。
関わる伝承
サチャママと対をなす。アマゾンの水の存在としては、ほかにブフェオ・コロラド(人に化ける桃色の川イルカ)がある。
シピボ族をはじめ、アマゾンの諸民族のアヤワスカ儀礼において、ヤクママは幻視のなかに現れる存在として語られる。
文化的足跡
「ヤクママ」の名は、ペルーのアマゾン地方で船、施設、団体の名に広く用いられている。
なおアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。