マミ・ワタ
マミ・ワタ · ママ・ワタ · Mami Wata
アフリカとそのディアスポラで崇敬される水の霊。長い髪の女あるいは半人半魚の姿で大蛇を身にまとう。富をもたらすが代償を求める。今日の図像は1880年代ドイツの蛇使いの女の石版画が西アフリカへ渡って定着したもの。
解説
概要
マミ・ワタ(ママ・ワタ)は、アフリカ、およびアフリカ系ディアスポラの南北アメリカとカリブ海地域において崇敬される水の霊である。
名はピジン英語の「マザー・ウォーター」に由来するとされるが、古代エジプト語に遡らせる説もある。
しばしば長い髪の女、あるいは上半身が女で下半身が魚の姿で表される。大きな蛇を身にまとう姿が定型である。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
職能
美、癒し、そして富の霊である。信者に富をもたらすが、その代償を求める。
マミ・ワタに愛された者は成功するが、人間との結婚を禁じられ、あるいは水に引き込まれる。富と危険が結びついている。
憑依。 マミ・ワタは人に憑依する。憑依された者は激しく踊り、水に飛び込もうとする。この霊は治療者を作る霊でもあり、憑依から回復した者が癒し手になる。
図像の起源
マミ・ワタの現在の図像には、特異な経緯がある。
1880年代のドイツで、ハンブルクの見世物興行のために「蛇使いの女」の石版画が作られた。この図像がイギリス経由で西アフリカへ渡り、20世紀初頭に大量に印刷されて広まった。
長い黒髪、大蛇を身にまとう姿——今日のマミ・ワタの図像は、この石版画に由来する。
土着の水の霊の信仰が、外来の印刷図像を取り込んで現在の形になった。植民地期の物流が、神の姿を決めた例である。
近代性の霊
マミ・ワタは、鏡、櫛、腕時計、サングラスといった舶来の品と結びつく。
海から来る富——交易、そして植民地の物資——を体現する霊である。伝統的な神格でありながら、近代とともに広まった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、舟のマミ・ワタ像である(ナイジェリア、ミュンヘン民族学博物館蔵)。
関わる神格・伝承
ヨルバのイエマンジャ、オロクンと水の領域を共有する。ブラジルのイエマンジャ信仰とも結びつく。
文化的足跡
マミ・ワタは、西アフリカと中央アフリカの現代美術における最も頻繁な主題の一つである。ナイジェリアの映画(ノリウッド)にも繰り返し登場する。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。