秘密集会
グヒヤサマージャ · 秘密集会タントラ · 一切如来金剛三業最上秘密大教王経
後期密教の父タントラを代表する経典とその主尊。8世紀後半の成立で梵本・チベット訳・漢訳が揃う。阿閦如来の忿怒形で三面六臂。ゲルク派の三大本尊のうち最も重要とされ、ツォンカパが多くの註釈を著した。
解説
概要
『秘密集会タントラ』(グヒヤサマージャ・タントラ)は、サンスクリット語で書かれた仏教の後期密教経典群の重要な経典の一つであり、その主尊の名でもある。
インド仏教ではヨーガタントラもしくはマハーヨーガタントラに分類されており、チベット仏教では無上瑜伽タントラに分類される。
経典
後期密教経典群のなかでは、最も早期に成立した『幻化網タントラ』に次いで成立したものとされ、成立時期は8世紀後半と推定されている。
梵本、チベット訳、漢訳の三種が揃っている。サンスクリットによる題名は「一切如来身語心の秘密中の極秘たる秘密集会という大秘密タントラ王」であり、そこから核心の部分を採って『秘密集会タントラ』と略称される。
漢訳は北宋の施護による『一切如来金剛三業最上秘密大教王経』である。
教義上の位置
無上瑜伽タントラの父タントラの代表とされる。母タントラ(チャクラサンヴァラ、ヘーヴァジュラ)が女尊と楽を強調するのに対し、父タントラは幻身と方便を強調する。
ゲルク派においては、秘密集会、チャクラサンヴァラ、ヴァジュラバイラヴァが三大本尊とされ、そのうち秘密集会が最も重要とされる。ツォンカパは秘密集会の註釈を多く著した。
主尊
主尊グヒヤサマージャは、阿閦如来の忿怒形とされ、三面六臂で、配偶者スパリキールティと抱擁して坐す。青い身色で、六手に金剛杵、鈴、輪、蓮華、宝珠、剣を持つ。
三十二尊の曼荼羅が知られる。
図像と象徴
固有の図像は多いが、本サイトは主画像を掲げない。
「秘密の集会」という名が示すとおり、この経典は身・語・心の三密を扱う。一切如来の秘密が一つに集まるという観念が、題に表れている。
過激な内容——性的な象徴と、通常の戒律に反する表現——を含むため、字義通りに読むべきでないとする解釈の伝統が発達した。チベットにおける註釈の膨大さは、この解釈の必要による。
関わる神格・伝承
阿閦如来の忿怒形。父タントラの代表。ゲルク派の三大本尊の一。
文化的足跡
『秘密集会タントラ』は、チベット仏教の学問体系において最も多く註釈された経典の一つであり、その解釈をめぐる議論が各宗派の教義の差を形づくった。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。