グズルーン
グズルーン · グドルーン · クリームヒルト
シグルズの妻でゲルマン英雄伝説の中心人物。夫を兄に殺されたのち、フン族の王アトリと再婚し、兄弟を殺されて復讐に子を殺し夫に食べさせた。ドイツの『ニーベルンゲンの歌』では逆に夫の復讐のため兄弟を滅ぼす。
解説
概要
グズルーン(Gudrun、古ノルド語 Guðrún)あるいはクリームヒルト(中高ドイツ語 Kriemhilt)は、シグルズ/ジークフリートの妻であり、ゲルマンの英雄伝説と文学における主要な人物である。
その起源は、フン族のアッティラの最後の妻イルディコと、メロヴィング朝の二人の王妃——アウストラシアのブルンヒルダとフレデグンド——にあると考えられている。
神話・物語
シグルズとの結婚。 ギューキ王の娘グズルーンは、母グリームヒルドが与えた忘れ薬によってブリュンヒルドの記憶を失ったシグルズと結婚した。
兄グンナルがブリュンヒルドに求婚するとき、シグルズが姿を変えて火の壁を越えた。のちにグズルーンとブリュンヒルドが川で髪を洗いながら夫の優劣を争い、グズルーンが真相を明かした。
シグルズの死。 恥辱に耐えかねたブリュンヒルドは、グンナルにシグルズの殺害を促した。シグルズは殺され、ブリュンヒルドは自らその火葬の薪に身を投じた。
アトリとの結婚。 グズルーンはのちにフン族の王アトリ(アッティラ)と結婚した。アトリはニーベルングの黄金を欲し、グズルーンの兄グンナルとホグニを招いて殺した。
グズルーンは復讐した。アトリとのあいだの二人の子を殺し、その心臓を料理して父に食べさせ、頭蓋を杯とした。そしてアトリを刺し、館に火を放った。
大陸版との差異。 ドイツの『ニーベルンゲンの歌』では、クリームヒルトが夫ジークフリートの復讐のために兄弟を滅ぼす。北欧版では、兄弟の復讐のために夫を殺す。同じ人物が、正反対の忠誠を持つ。
血族への忠誠か、婚姻への忠誠か——ゲルマン社会の二つの絆の対立が、この差異に現れている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、館に火を放つグズルーンを描いた図である。
子を殺して父に食べさせるという主題は、ギリシアのプロクネー、アトレウスの物語と同型である。
関わる神格・伝承
夫はシグルズ、次いでアトリ、次いでヨーナクル。兄はグンナルとホグニ。娘はスヴァンヒルド。
文化的足跡
ワーグナー『ニーベルングの指環』のグートルーネは、この人物に基づく。ウィリアム・モリス『ヴォルスングのシグルズ』(1876年)も、この物語を英語の叙事詩として扱った。