プロクネー
プロクネ · プロクネー · Procne
アテーナイ王パンディーオーンの娘で、トラーキア王テーレウスの妻。妹ピロメーラーが夫に犯され舌を切られたことを織物で知り、報復として我が子イテュスを殺して夫に食べさせた。追われて鳥に変えられ、ギリシアの伝えでは夜鶯となった。
解説
概要
プロクネー(Πρόκνη / Prokne)は、アテーナイ王パンディーオーンの娘で、トラーキア王テーレウスの妻である。夫が妹ピロメーラーを犯して舌を切ったことを知り、報復としてわが子イテュスを殺して夫に食べさせた。母による子殺しという点で、メーデイアと並ぶ悲劇的な女性像である。
神話・物語
アテーナイがテーバイの王ラブダコスと戦ったとき、トラーキアのテーレウスが援軍を率いて来た。パンディーオーンはその礼として娘プロクネーを嫁がせ、二人のあいだに子イテュスが生まれた(アポロドーロス3.14.8)。
妹に会いたいという願いが、すべての発端となった。夫はピロメーラーを連れてくる途中で彼女を犯し、声を奪って閉じ込め、妻には妹の死を告げた。やがて届いた妹の織物で真相を知ったプロクネーは、ディオニューソスの祭に乗じて妹を救い出す。
プロクネーは、夫に与えうる最も深い傷として、夫の血を引くわが子を選んだ。オウィディウスは、父に似た子の顔を見て一瞬ためらい、それでも手を下す母の心の動きを描いている。姉妹は子の肉を料理して夫に食べさせ、真実を明かした。
追われた姉妹は鳥になった。ギリシアの伝えではプロクネーが夜鶯となり、「イテュ、イテュ」と子の名を呼ぶように鳴き続けるという。ラテン語の伝統では燕とされる。
図像と象徴
本サイトの主画像は、前490年頃のアッティカの赤絵式杯に描かれた、イテュスを殺そうとする姉妹の場面である。子の殺害の直前をとらえる図は、前5世紀のアテーナイで好まれた。アクロポリスには、アルカメネースに帰されるプロクネーとイテュスの大理石像(前5世紀後半、アクロポリス博物館蔵)が奉納されていた。

系譜と関係
父はパンディーオーン(1世)、母はゼウクシッペー。妹はピロメーラー。夫はテーレウス、子はイテュス。
文化的足跡
ソポクレースの悲劇『テーレウス』は断片しか残らないが、嫁いだ女の境遇を嘆くプロクネーの台詞の一節が伝わり、古典期の女性の立場を語る資料として引かれる。夜鶯の鳴き声を子を悼む母の声とする見方は、『オデュッセイア』第19巻で、パンダレオスの娘が夜鶯となってわが子イテュロスを嘆く比喩にも見える。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。