フィンダヴァル
フィンダヴィル · フィンナヴァル · Finnabair
アイルランド神話のコナハトの王女。メイヴとアリルの娘で、クー・フーリンと戦う男たちへの褒美として繰り返し差し出された。
解説
概要
フィンダヴァル(Findabair)は、アルスター物語群に登場するコナハトの王女である。アリル・マク・マータとメイヴの娘。
名は「白い幻」を意味し、語源上はウェールズ語のグウェンフイヴァル——アーサー王の妃グィネヴィアの原形——と同源にあたる。『クアルンゲの牛捕り』の主役ではないが、その働きは物語の骨格に関わる。彼女の美しさと、繰り返される婚姻の約束が、数百人の死を招いた。
神話・物語
『牛捕り』において、母はクー・フーリンと戦う戦士たちに、褒美として娘を差し出し続ける。ナド・クランタル、ラーリネ・マク・ノーシュ、そして七人のムンスターの王たち——同じ娘が幾人にも約束された。
クー・フーリン自身に差し出されたこともある。相手になる戦士が見つからなかったときのことで、しかしアリル本人ではなく道化が王の装いで娘を連れて行った。見破ったクー・フーリンは道化を殺し、石柱を貫いて据え、もう一本をフィンダヴァルの上着に打ち込んだ。その場に残った二つの石は、道化の石とフィンダヴァルの石と呼ばれる。
最も重いのはフェル・ジアドの場合である。義兄弟との戦いを拒み続けるこの戦士に、娘は酒を注いで誘い、母はこの子はお前だけを想い、世界じゅうの男のなかからお前を選んだのだと告げた。フェル・ジアドはついに承知し、浅瀬でクー・フーリンに討たれる。友を悼むクー・フーリンの詩は、この婚約に触れて言う——お前が手に入ると思ったあの美しい餌、メイヴの娘フィンダヴァル。砂を縄で縛ろうとするようなものだ。
彼女自身の想いが向かった相手も語られる。『フラーフの牛捕り』ではフラーフを愛したが、婚資が折り合わず、母に買収された相手はコナハトへの加勢と引き換えに彼女を受け取ることに同意した。そのフラーフは川でクー・フーリンに討たれる。最後に心を寄せたのはロハド・マク・ファイヘヴァンで、決戦の前にアルスター側についたこの男を引き止めるため、母はまた娘を用いた。娘は一夜を彼と過ごす。しかし同じ娘を約束されていた七人の王がこれを知って怒り、アリルの子らとのあいだに戦が起こって七百人が死んだ。自分がどう使われ、どれほどの男が自分ゆえに死んだかを聞かされたフィンダヴァルは、恥じてその場で息絶えた。フィンダヴァル・スレーヴェ(山のフィンダヴァル)という地名はこれによる。
図像と象徴
図像は伝わらず、当サイトも主画像を掲げない。
物語が彼女に与える標識は、繰り返される婚姻の約束そのものである。褒美として差し出され、断られ、また差し出される。石柱に上着を打ち込まれる場面は象徴的で、彼女は動かされる側であり、置かれる側である。最後に恥によって死ぬという結末は、中世アイルランドの物語において名誉の毀損が命に関わることを示す。
系譜と関係
父はアリル・マク・マータ、母はメイヴ、兄に七人のマイネ。夫はフラーフ。
母との対比は明確である。メイヴが自らの意志で夫を選び、王を廃し、戦を起こすのに対し、娘は一度も選ばない。『牛捕り』が女の主権を語る物語だとすれば、この娘はその裏面に置かれている。なおディンシェンハスには、ルガド・レグデの娘とされる別のフィンダヴァルも現れる。
文化的足跡
名がグィネヴィアと同源であることは、19世紀以来くり返し論じられてきた。ただし語源の一致が物語の系統を意味するわけではなく、両者の筋書きに直接の対応はない。近代の再話では、この王女はしばしば省略されるか、母の道具として一言で片づけられる。原典が彼女の死に一行を割き、その死に地名を結びつけていることは、写字生の側にそれなりの重みづけがあったことを示している。