ファウナ
ファウナ · ファトゥア · フェンタ・ファウナ
ファウヌスの妻・姉妹・娘とされる女性形の対応神。ボナ・デアと同一視され、女性だけの秘儀で祀られた。リンネが著作の題に用いたことで「動物相」を意味する語になった。
解説
概要
ファウナ(Fauna)は、ローマの素朴な女神で、異なる古代資料においてファウヌスの妻、姉妹、あるいは娘とされる。ウァッローはファウヌスの女性の対応者とみなし、ファウニーはすべて予言の力を持つと述べた。ファトゥアあるいはフェンタ・ファウナとも呼ばれる。
名
名はラテン語ファウヌスの女性形である。ファウヌス自体はイタリック祖語 *fawe あるいは *fawono、究極的には印欧祖語 *bʰh₂u-n(「好意的な」)に遡ると一般に考えられる。それゆえジョルジュ・デュメジルはその名を「好意的な女」と訳した。
ローマの神格への概念的な接近において、ミヒャエル・リプカはファウヌスとファウナを、機能の領域内に性の相補的な対を形成するという特徴的にローマ的な傾向の例とみる。男女の対は決して同等の重要性を持たず、一方(必ずしも女性ではない)が他方を範として造形されたとみられる。
ボナ・デアとの同一視
ファウナはしばしばボナ・デア——「善き女神」——と同一視される。マクロビウスによれば、ボナ・デアはファウヌスの娘ファウナであり、あまりに貞節で男の目に触れることがなかったため、女たちだけの秘儀で祀られたという。
別の伝えでは、ファウナはファウヌスの妻で、酒を飲んだために夫にミルテの枝で打たれて死んだ。以後ボナ・デアの儀礼では酒を「乳」と呼び、ミルテを禁じたとされる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
男神の女性形として造られた女神という点が、この神格を規定する。独立した神話をほとんど持たず、ファウヌスとの関係——妻・姉妹・娘のいずれか——によってのみ定義される。
ボナ・デアとの同一視によって、女性だけの秘儀という具体的な祭祀を得た。
関わる神格・伝承
ファウヌスの妻・姉妹・娘。ボナ・デアと同一視される。
文化的足跡
「ファウナ」は近代の博物学において「動物相」を意味する語になった。リンネが1746年の著作『スウェーデン動物誌』の題にこの女神の名を用い、「フローラ」(植物相)と対にしたことによる。ローマの小さな女神の名が、生物学の基本用語として世界に広まった。