エーエティオーン
エエティオン · Eetion · Ēetiōn
トローアスのテーベー王でアンドロマケーの父。アキレウスに討たれたが、遺体は辱められず甲冑のまま葬られた。七人の息子も皆アキレウスに殺され、一家は滅亡した。
解説
概要
エーエティオーン(Ἠετίων)は、ギリシア神話の人物の名である。主として二人が知られる。
同名の人物たち
アンドロマケーの父エーエティオーンは、トローアス地方の都市テーベーの王で、七人の息子と、娘アンドロマケーの父である。アンドロマケーは、トロイアの王プリアモスの子ヘクトールの妻となった。ホメーロスは、この王の治めるテーベーを「聖なる都」と呼んでいる。エーエティオーンはトロイア戦争の初めのころの戦いでアキレウスに討たれた。しかしアキレウスは、鎧を剥ぎ取って遺体を辱めることはせず、鎧をまとわせたまま火葬し、墓を築いて葬った。ゼウスの娘である山のニュンペーたちは、その墓のまわりに楡の木を植えたという。七人の息子は、家畜の世話をしているところを皆アキレウスに殺された。妻はアキレウスに捕らえられたのち、莫大な身代金と引き換えに解き放たれたが、アルテミスの矢に射られて世を去った。アガメムノーンの捕虜となったクリューセーイスは、ブリーセーイスと並んで知られる女性だが、テーベーを訪れていたときにアキレウスに捕らえられたのであった。
イムブロス島の王のエーエティオーンは、プリアモスの子リュカーオーンが捕虜として売られたとき、これを買い取って自由にした人物として、『イーリアス』第21巻に現れる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
第一のエーエティオーンの死をめぐる記述は、『イーリアス』第6巻でアンドロマケーの口から語られる。父と七人の兄弟と母をすべてアキレウスに奪われた女が、今また夫ヘクトールをアキレウスに奪われようとしている——この一家の滅亡が、アンドロマケーの嘆願の背景をなす。
アキレウスが遺体を辱めなかったという記述は、のちのヘクトールの遺体への扱いとの対比として読まれる。同じ英雄が、戦の初期には敵王を礼をもって葬り、末期には敵将の遺体を引きずり回す。
関わる神格・伝承
第一の娘はアンドロマケー、婿はヘクトール。討ち手はアキレウス。
文化的足跡
日本語圏では、アンドロマケーの父として言及される程度である。しかし『イーリアス』第6巻の嘆願の場面は、叙事詩全体で最も知られた場面の一つであり、この王の死がその前提をなしている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。