ジヴォジョナ
ジヴォジョーナ · ママナ · ボギンカ
ポーランド山地の女の魔物。川辺の藪に住み、生まれたばかりの子をさらって自分の子と取り替える。産婆や未婚の母が死後この魔物になると恐れられた。
解説
概要
ジヴォジョナ(Dziwożona)は、ポーランドの山地に語られる女の魔物である。川や小川、湖のそばの藪に住み、生まれたばかりの子をさらって自分の子と取り替える。同じ存在が、地域によってママナ(mamuna)、ボギンカ(boginka)とも呼ばれる。
産婆、行き遅れた娘、未婚の母、出産前に死んだ妊婦、そして婚外に生まれて捨てられた子——死後この魔物になると恐れられたのは、いずれも共同体の縁にいた女たちであった。
登場する物語
姿の記述は容赦がない。醜く背の曲がった老女で、体は毛深く、髪は長くもつれている。乳房は異様に長く、背中へ投げ渡して洗濯に使うほどだという。頭にはシダの小枝を挿した赤い帽子をかぶる。住まいは崖の崩れた岩場、湖(ジャビェ湖など)、山の洞窟である。
最も恐れられたのが取り替え子である。ジヴォジョナは揺りかごから赤子をさらい、代わりに自分の子を置いていく。置き去りにされた子はオドミェニェツ(odmieniec、取り替え子)と呼ばれた。見分けの徴も細かく語られる。均整を欠いた身体、大きすぎる腹、異様に小さいか大きい頭、こぶ、細い手足、毛深い体、長い爪。歯が生えるのが早い。周囲の人間に強い悪意を示し、母を恐れ、騒がしく、眠りたがらず、途方もない大食である。育つことは稀で、多くは幼いうちに死ぬとされた。育った場合は障害を負い、言葉ではなく訳の分からぬ音を発し、人を信じない。
近代の目で読めば、これは先天性の障害や発達の遅れを持って生まれた子を、母親の責任から切り離すための説明であった。同時に、そう名指された子がどう扱われたかを示す記録でもある。
守り方も伝わる。赤い紐を子の手に結ぶ(この習俗はポーランドの一部にいまも残っているが、由来は忘れられている)。赤い帽子をかぶせる。月の光が顔に当たらないようにする。日が沈んだあとにおむつを洗ってはならず、眠っている子から目を離してはならない。セイヨウオトギリソウ(ジウラヴィェツ)の花を家に置き、危険が迫れば手に握る。
取られたあとにも手はある。取り替え子をごみ捨て場か畑の境まで運び、白樺の枝で打ち、卵の殻で汲んだ水を浴びせながら「お前のを取れ、私のを返せ」と叫ぶ。自分の子の泣き声に心を動かされたジヴォジョナが戻ってきて、さらった赤子を返すのだという。
若い娘や新妻をさらう話もある。連れ去られた女が岸辺で通りかかった男に声をかけ、身の上を語り、二人でオトギリソウの力を頼んで逃げる。あるいは、蕪畑で捕まったジヴォジョナが赤い帽子を落として逃げ、その後たびたび窓の下に来ては帽子を返してくれと乞う——といった話も残る。
図像と象徴
本項の主画像は、ヤン・スティフィがヘンリク・ピラティの原画にもとづいて彫った木口木版で、1864年の『ティゴドニク・イルストロヴァニ』に掲載されたものである。19世紀ポーランドのロマン主義が、この山の魔物をどう思い描いたかを示す。
象徴の中心にあるのは、母になれなかった女と、母になりそこねた出産である。産婆、未婚の母、出産前に死んだ妊婦——死んだあとにジヴォジョナになるとされた者の一覧は、そのまま出産をめぐる不安の一覧になっている。赤い紐、赤い帽子、月の光を避けること、日没後の洗濯を禁じることも、すべて新生児の周囲に張りめぐらされた作法である。
関係する神格・退治した英雄
退治する英雄はいない。防ぐか、取り返すかのどちらかである。
名は「野生の女」を意味する。ポーランド語のジヴォジョナは、スロヴァキア語の diva žena(野生の女)からの借用で、1855年に刊行されたジグムント・カチュコフスキの小説『ジヴォジョナ』によって広まった語である。チェコ語ではディヴォジェンカ、フツル人のあいだではディカヤ・ジェナ、ルジッツァのソルブ人ではヴォドナ・ジェナ(水の女)。赤ルーシではボヒニェ(女神たち)という語がこの存在の記述に当てはまる。
ポーランドの資料では、ジヴォジョナ、ママナ、ボギンカの三語がほとんど交換可能に用いられる。タトラ山地の山人はジヴォジョナを、スロヴァキアの山人はディヴァ・レナを好んで用いた。のちにこれら三つの呼び名は、いずれもルサールカの名に吸収されていく。同じ「まっとうに死ねなかった女」という観念圏に属する点で、ナヴやヴィーラとも隣り合う。
取り替え子という主題そのものは、ヨーロッパに広く分布する。ゲルマン語圏のヴェクセルバルク、ケルト圏のチェンジリング、ストシガのように生まれつきの徴で判別される存在も、同じ不安を別の形で語ったものである。
文化的足跡
カチュコフスキの小説(1855年)以降、ジヴォジョナはポーランドの幻想文学の常連になった。現代ではアンジェイ・サプコフスキの『ウィッチャー』シリーズにも登場し、ゲームを通じて国外にも知られる。
赤い紐を赤子の手首に結ぶ習俗は、ポーランドの一部でいまも続いている。もとが取り替え子除けであったことを知る人は少ない。この魔物の名だけが忘れられ、作法のほうが残った例である。