斗母元君
とぼげんくん · 斗母 · 斗姆元君
北斗七星の母とされる道教の女神で、延命と除災を司る。紫光夫人が池の九つの蓮から九人の子を得て、北斗七星と二人の天帝としたと説かれる。仏教の摩利支天と同一視され、三眼四面八臂の姿をとる。
解説
概要
斗母元君(とぼげんくん)は、道教の女神で、北斗七星の母とされる。斗姆・斗姥とも書き、斗姥元君、道母天尊などとも呼ばれる。人の寿命を記した北斗を司ることから、延命と除災を祈る対象となった。仏教の摩利支天と同一視され、その姿と真言を受け継いでいる。
神話・物語
斗母の経典が伝えるところでは、はるか昔、周御という王に紫光夫人という妃があった。夫人は国を助ける聖なる子を授かりたいと誓いを立て、ある春の日に池で身を清めると、池に九つの蓮の蕾が現れ、九人の子となった。長子は天皇大帝、次子は紫微大帝となり、残る七人が貪狼・巨門・禄存・文曲・廉貞・武曲・破軍の北斗七星となった。紫光夫人はこうして北斗の母、斗母と称された。
信仰
摩利支天との結びつきは、遅くとも唐代の密教にさかのぼる。道教の斗母の経典に収められた呪文は、摩利支天の長い陀羅尼の一つと一致する。衆生が難にあえば摩利支天となって救うとも説かれた。
明清の小説『封神演義』では、殷の側について戦った金霊聖母が、死後に「坎宮斗母」に封じられる。
図像と象徴
三つの眼をもつ四つの顔と八本の腕をもつ姿で表され、手には太陽と月、弓と矢、矛、印、鈴などを持つ。摩利支天にならい、猪を伴うこともある。主画像は、福建の徳化窯で清代(1700〜1800年頃)に焼かれた白磁の斗母像(サンフランシスコ・アジア美術館蔵)である。
系譜と関係
北斗七星と天皇大帝・紫微大帝の母。同じく北斗を司る点で、日本の妙見菩薩と職能を共有する。
文化的足跡
台湾・香港・東南アジアの道観には斗母殿が置かれ、延命を祈る拝斗の儀礼が行われる。マレーシア、シンガポール、タイ南部では、旧暦九月一日から九日にかけて、斗母の九人の子を祀る九皇大帝の祭が盛大に営まれる。タイのプーケットの菜食祭はその一つである。
なお中国の民間信仰と道教は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。