デーヌカ
デーヌカ · Dhenuka · Dhenukāsura
ロバの姿をしたラークシャサ。椰子の森の果実を守り人肉を食べたが、バララーマに足を掴まれて振り回され、椰子の木に投げつけられて死んだ。
解説
概要
デーヌカ(梵 धेनुक Dhenuka)は、インド神話に登場するラークシャサあるいはアスラである。
『バーガヴァタ・プラーナ』によれば、ロバの姿をしており、バララーマによって退治された。
神話・物語
クリシュナとバララーマが少年時代を過ごしたゴークラの近くに、椰子の生い茂る大きな森があった。その場所はいつも多くの果実であふれていた。
デーヌカはこの果実を守り、さらに多くのロバがこれを取り囲んで守っていた。デーヌカは人肉を食べたため、人々は怖がって近づかなかった。
少年だったクリシュナとバララーマは、友人シュリーダーマーからこの魔のことを聞き、果実を食べたがる友人のために森へ向かった。彼らが森に来て、木々の枝から果実を落としていくと、デーヌカは激しく怒り、後足でバララーマを蹴り上げた。
しかしバララーマはものともせず、片手で魔の足を掴んで振り回した。振り回されるうちに魔は息絶え、バララーマが椰子の木に投げつけると、木は大きく撓んで隣の木を揺らし、ついには森全体が揺れ動いた。
デーヌカが殺されるのを見た他のロバたちは憤慨してクリシュナとバララーマに突進したが、二人はたやすく返り討ちにした。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この挿話で活躍するのがバララーマである点に注意がいる。クリシュナの幼年譚の多くはクリシュナ自身が魔を退けるが、ここでは兄が主役を務める。バララーマの怪力を示す代表的な場面であり、この人物が単なる従者ではないことを示す。
ロバという姿も特徴的である。インドにおいてロバは劣った獣とされ、罰の象徴として用いられることがある。強大な魔がロバの姿をとるという設定には、その滑稽さが含まれている。
関わる神格・伝承
討ち手はバララーマ。同じくクリシュナ兄弟が退けた魔としては、プータナー、トリナーヴァルタ、カンサの遣わした一連の刺客がいる。
森と果実を独占する魔という設定は、共同体から資源を奪う存在の形象である。それを退けることで、少年たちは共同体に果実を取り戻す。
文化的足跡
デーヌカを退治した森は、ターラヴァナ(椰子の森)と呼ばれ、今日もブラジ地方の巡礼地の一つである。
日本語圏では、バララーマ自体の紹介が乏しく、この挿話が語られることはまずない。しかしクリシュナ信仰の中心地ブラジにおいて、兄バララーマの功績を伝える場所として記憶されている。