テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
チトラグプタ
PLATE — चित्रगुप्त
BHARATA · ヒンドゥー神話
चित्रगुप्त

チトラグプタ

チットラグプタ · チットラグプト · カーヤスタ

バイ・ドゥージのチトラグプタ・プージャ(2022年)/撮影: Bhaiyaji Smile 123, CC BY-SA 4.0 CC BY-SA 4.0

死者の記録を司るヒンドゥーの神。人の行いを帳簿アグラサンダーニーに記し、ヤマの前で読み上げる。墨壺と筆だけを持物とする、書記の神である。

01

解説

概要

チトラグプタ(サンスクリット चित्रगुप्त、「秘密に富む者」あるいは「隠された絵」)は、ヒンドゥー教で死者の記録を司る神である。人の行いを一冊の帳簿——アグラサンダーニー——に記し続ける。

人が死んでヤマローカ(ヤマの国)へ至ると、チトラグプタがその行いを読み上げる。それを聞いて死の神ヤマが、その者をスヴァルガ(天界)へ送るかナラカ(地獄)へ送るかを決める。

ブラフマーの十七番目のマーナサプトラ(意より生まれた子)とされる。ブラフマーの魂と心(チット)から生じたため、バラモンのようにヴェーダを記す権利を与えられ、同時にクシャトリヤの務めをも課されたと語られる。

神話・物語

由来を最も具体的に語るのは、ヒンドゥー法の書『アヒリヤー・カームデーヌ』第九章から抜き出された『ヤマ・サンヒター』である。

ダルマラージャ(ヤマ)がブラフマーに、人の行いを記録し正しく裁くという最も重い務めを果たしがたいと訴えた。ブラフマーは瞑想に入る。その身体からチトラグプタが跳び出し、墨壺と筆を携えて立った。ブラフマーは言う——お前は私の身体(カーヤ)から生じたのだから、カーヤスタと呼ばれよ。そして私の身体のうちに見えずして在ったのだから、チトラグプタの名を与える。クシャトリヤのダルマをお前とその子孫が守るがよい。

こうしてチトラグプタはヤマプリの任に就いた。ヤマは娘イラーヴァティーを、シュラーッダデーヴァ・マヌは娘ナンディニーをこの神に嫁がせたという。

『ガルダ・プラーナ』は、解脱に至らなかった魂が罪と功徳に応じて報いを受けると説き、ヤマローカにおけるチトラグプタの玉座と、人の行いに応じて裁きを下しつつ記録を保つ姿を描く。『パドマ・プラーナ』は、この神が超自然の智慧を備え、神々と火に捧げられる供犠にあずかるとし、それゆえ再生族は食事から供物を捧げるのだと説明する。『バヴィシュヤ・プラーナ』もほぼ同じ由来を記す。

マハーバーラタ』アヌシャーサナ・パルヴァ第130章は、チトラグプタの教えを伝える。人は徳ある行いと施しを為し、祭祀を執り行うべきである。人は善悪の行いに応じて報いられ、あるいは罰せられるのだ、と。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、バイ・ドゥージの日に行われるチトラグプタ・プージャの写真である。

持物は墨壺と筆、そして帳簿である。武器も乗物も持たない。ヒンドゥー教の万神殿において、書記の道具だけを属性とする神は数少ない。

名の解釈が、この神の性格を言い当てている。チトラは「絵」、グプタは「隠された」。人の生涯を一枚の絵として、本人の見えないところに保存している者——という読みである。「秘密に富む者」という訳も同じところを指す。

現代のインドでは「データの神」と呼ばれることがある。記録が判断の根拠になるという構造が、情報を扱う職業と結びつけられた結果である。

系譜と関係

父はブラフマー。妃はヤマの娘イラーヴァティーと、マヌの娘ナンディニーとされる。

ヤマとの関係が職掌のすべてを規定する。ヤマが裁く者であり、チトラグプタが記録する者である。裁定と記録が別の神格に分けられているという配置は、セシャトトート、あるいはエジプトの心臓の計量における書記の役割とも比較されてきた。ただし両者を結ぶ史料上の根拠はない。

文化的足跡

カーヤスタと呼ばれる共同体は、この神を祖と仰いできた。ディーパーヴァリーの翌々日にあたるヤマ・ドゥヴィティーヤー(バイ・ドゥージ)には、チトラグプタ・プージャが営まれる。筆と帳簿を清め、その年の収支を記して神前に供える儀礼であり、今日も広く行われている。

書くことが宗教的な務めとして位置づけられ、それが職業共同体の自己理解に結びつく。日本語圏でこの神が紹介されることはほとんどないが、記録という営みに神格を与えたという点で、ヒンドゥー教の神々のなかでも特異な位置にある。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q1076129 — 骨格データの出典
Commons
Chitragupta — 図像カテゴリ