チブチャクム
チチェバチュン · Chibchacum · Chichebachun
ムイスカの雨と雷の神。怒ると高原を洪水で満たし、ボチカに反乱を起こした。罰として大地を担がされ、肩を動かすたびに地震が起こる。虹が出ると人々は感謝の供物を捧げた。
解説
概要
チブチャクム(チチェバチュン)は、先コロンブス期にクンディボヤカ高原に住んだムイスカの宗教における雨と雷の神である。
なおムイスカはコロンビアのアンデス北部の文明であり、本サイトではアンデス神話としてインカの体系に含めて扱う。
神話・物語
神話では、チブチャクムが怒ると平地に激しい雨を送り、川を氾濫させ、ムイスカの農耕と家(ボイオ)を破壊した。雨が終わって太陽が再び輝き、虹クチャビラが現れると、人々は感謝のしるしに低品位の金や金銅合金(トゥンバガ)、海の貝、小さなエメラルドを捧げた。
一つの話では、ムイスカが岩を崇めボチカを拝んだことにチブチャクムが怒り、ボチカに反乱を起こした。地上に降り、水を汲みに来た女チエを見て、ボチカを倒したら妃にすると約束して反乱に引き入れた。チエは加わり、やがて皆が争いはじめる。
チブチャクムは高原を洪水で満たした。ボチカは杖で岩を打ってテケンダマの滝を作り、水を落として人々を救う。罰としてチブチャクムに大地を担がせ、それゆえ彼が肩を動かすたびに地震が起こる。チエは梟に変えられた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この神を規定するのは、雨の両義性である。農耕に必要な雨をもたらす神が、怒れば洪水をもたらす。感謝の供物は、雨が止んで虹が出たときに捧げられる。
大地を担いで地震を起こすという罰は、ギリシアのアトラースと同型である。天を担ぐか大地を担ぐかの違いはあるが、罰として世界を支えるという構図が共通する。
関わる神格・伝承
ボチカと対立する。虹クチャビラは、雨の終わりを告げる存在としてチブチャクムに従属する。
ムイスカの神々としては、創造神チミニガグア、太陽スエ、月チア、母神バチュエがある。
文化的足跡
クンディボヤカ高原は今日もコロンビアの主要な農業地帯であり、雨季の洪水は現代の問題でもある。チブチャクムの物語は、この地の気候の記憶を留めている。
なおアンデスとアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。