カトゥボドゥア
カトゥボドゥア · Cathubodua
フランス東部で見つかった一つの奉献碑文にのみ確認されるケルトの神で、名は「戦の鴉」を意味する。アイルランドの戦の女神バズヴ(戦の鴉)と同語源とされ、大陸と島のケルトの宗教の連続性を示す例として引かれるが、碑文一つからの推論には限界がある。
解説
概要
カトゥボドゥアは、フランス東部のオート=サヴォワ県ミュシーの近くで見つかった一つの奉納碑文にだけ名が残る、古代ケルトの神である。名はケルト祖語で「戦の鴉」を意味すると再構成され、アイルランドの戦の女神バズヴと同じ源を持つとされる。ただし、碑文一つから神の姿を推し量ることには限界がある。
なお本サイトの分類では、ケルト神話の体系に含めて扱う。
一つの碑文
アルプスの麓の村の近くで、ローマ時代の石に刻まれたこの名が見つかったのは1867年のことである。ほかの資料は一つもなく、どのような神で、何を司っていたのかは記されていない。名だけが残った神である。
名から推し量る
名の前半「カトゥ」は「戦」、後半「ボドゥア」は「鴉」を意味するとされ、合わせて「戦の鴉」と解される。アイルランドには「バズヴ・カタ(戦の鴉)」と呼ばれる戦の女神バズヴがおり、名の組み立てがよく一致する。このことから、大陸のガリアと島のアイルランドに、同じ名の戦の女神が祀られていたと推測されている。大陸と島のケルトの宗教のつながりを示す例として、しばしば引かれる名である。
推論の限界
とはいえ、一つの碑文からアイルランドの女神と同一の神だと断定することはできない。名の源が同じであっても、司る事柄や信仰のありようまで同じだったとは限らない。語源の研究から神話の研究へ、一つの石から大陸と島の宗教史へと、推論の鎖は長くなる。本項では、対応関係を示すにとどめ、その確かさには限りがあることを記しておく。
戦場の鴉
戦場で死者をついばむ鴉は、戦と死のしるしとされてきた。アイルランドの戦の女神モリガンも鴉の姿で現れ、北欧の主神オーディンに仕える二羽の鴉フギンとムニンも戦場と結びついている。戦場の鳥が神の姿と重ねられるのは、各地に見られることである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
バズヴと同じ源を持つとされ、モリガン、マッハとともに戦の女神の系列に連なる。
文化的足跡
日本語でこの名が挙げられることはまずなく、ケルトの宗教の比較研究のなかで言及される。
なおケルトの伝承は今日も語り継がれており、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。