カミッラ
カミラ · Camilla
『アエネーイス』のウォルスキ人の女戦士。幼時に父が槍に縛って川の対岸へ投げ、ディアーナに捧げた。麦の穂を折らずに駆ける俊足で騎兵を率いたが、黄金の装束に目を奪われた隙に槍に貫かれた。
解説
概要
ウェルギリウス『アエネーイス』において、ウォルスキ人のカミッラ(Camilla)は、ラティウムの戦争でトロイア人と戦う女戦士である。第11巻で主役を務め、トロイア人との戦いを率いて、ついに殺される。カミッラは王メタブスと女王カスミッラの娘である。
『アエネーイス』における物語
ウェルギリウスは、カミッラが足の速さのあまり、麦畑を穂を折らずに駆け、海を足を濡らさずに駆けることができたと語る。
カミッラが幼児のとき、父メタブスは王位を追われ、武装したウォルスキ人に追われて荒野へ逃げた。カミッラを腕に抱いていた。アマセヌス川が行く手を塞ぎ、子を案じたメタブスはカミッラを槍に縛りつけた。ディアーナにカミッラを従者——処女の戦士——として捧げると誓い、槍を対岸へ投げて、自らは泳いで渡った。幼いカミッラは牝馬の乳で育てられ、幼いころから狩りを覚えた。
戦争において、カミッラはトゥルヌスの側でトロイア人と戦った。第11巻では騎兵を率いて奮戦し、多くのトロイア人を討つ。しかし、キュベレーの神官クロレウスの黄金の装束に目を奪われ、これを追っているあいだに、エトルリア人アッルンスの槍に貫かれた。
ディアーナは従者オーピスを遣わしてアッルンスを射殺させ、カミッラの遺体を故郷へ運ばせた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サンクトペテルブルクの夏の庭園にあるカミッラの胸像である。
女戦士という位置が、この人物を規定する。ギリシアのペンテシレイア——アキレウスと戦ったアマゾーンの女王——との対応が指摘される。いずれも外来の英雄の敵として戦い、戦場で死ぬ。
黄金の装束に目を奪われて死ぬという細部は、処女戦士の弱点として機能する。ディアーナに捧げられた者が、装飾への欲望で命を落とす。
関わる神格・伝承
父はメタブス、母はカスミッラ。ディアーナの従者。トゥルヌスの同盟者。
ウェルギリウス以前にカミッラの伝承は確認されず、ウェルギリウスの創作とみられる。ペンテシレイアを範として、イタリアの土着の女戦士が造形された。
文化的足跡
カミッラは、ルネサンス以降、女戦士の典型としてタッソ『解放されたエルサレム』のクロリンダなどに影響を与えた。