ブーリ
ブリ · ブーリ · Búri
原初の牝牛アウズンブラが霜の石を三日舐めて現れた神。オーディンの祖父にあたる。子ボルをもうけた過程は説明されず、言及も散文のエッダに二度のみである。
解説
概要
ブーリ(古ノルド語 Búri、ブリとも)は、北欧神話の神である。オーディンの祖父にあたり、アース神族の最も早い祖とされる。
原初の牝牛アウズンブラが塩気を帯びた霜の石を三日かけて舐めることによって、この神が現れた。それ以前の来歴は伝わらない。
神話・物語
『ギュルヴィたぶらかし』が語るところによれば、アウズンブラが霜の石を舐めた最初の日に人の髪が現れ、二日目に頭が、三日目に全身が現れた。こうして生じたのがブーリである。美しく、大きく、力ある者であったという。
ブーリには子ボルがあったが、どのようにしてもうけたかは説明されない。自ら生じさせたのか、交わりによるのかは不明である。ボルは霜の巨人ボルソルンの娘ベストラを娶り、オーディン、ヴィリ、ヴェーの三兄弟を生んだ。この三兄弟が原初の巨人ユミルを殺し、その身体から世界を作る。
言及は少ない。『散文のエッダ』に二度——『ギュルヴィたぶらかし』と、『詩語法』に引かれる12世紀のスカルド、ソルヴァルド・ブレンドゥスカールドの詩——現れるだけである。『古エッダ』には現れず、スカルド詩の全体を通じても一度きりである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、18世紀アイスランドの写本 NKS 1867 4to に描かれたアウズンブラの図である。牝牛が霜の石を舐め、そこからブーリが現れる場面が表されている。
名の意味が、この神の位置を示している。ブーリとその子ボルの名は、いずれもゲルマン祖語 *buriz(「息子、生まれた者」)に由来する。つまり両者の名は本質的に同じことを意味する。研究においてブーリは「産まれた者、父」、ボルは「産まれた者、子」と訳し分けられるが、これは世代の順序によるにすぎない。
生まれることそのものが名になっている神格が、系譜の最初に置かれている。存在の始まりを、行為ではなく「生じた」という事実だけで語る構成である。
関わる神格・伝承
子はボル、孫はオーディン、ヴィリ、ヴェー。生じさせたのはアウズンブラ。
原初の存在をめぐる北欧の記述は、二系統が並存する。ユミルの系統——霜から生じ、その身体が世界になる——と、ブーリの系統——霜から生じ、その子孫が神々になる。同じ霜と塩の石から、殺される者と殺す者の双方が現れることになる。
文化的足跡
日本語圏では、北欧の創世神話はユミルとアウズンブラを中心に紹介される。オーディンの祖父にあたるこの神の名まで挙げられることは少ない。
しかし出自の不可解さ——石から現れ、子をもうける過程が説明されない——は、古くから研究者の注釈と解釈の対象であり続けてきた。原初の記述にあえて空白が残されているとも読める。