ボルウォ
ボルモ · ボルヴォ · ボルマヌス
ガリアの温泉と治癒の泉の神。アポロと同一視され、女神ダモナと対で祀られた。ブルボンなど多くの温泉地名の由来である。
解説
概要
ボルウォ(Borvo、ボルモとも)は、温泉と治癒の泉をつかさどる古代ケルトの神である。ローマ支配下のガリアの広い範囲で信仰が確かめられ、イベリア半島北西部にまで及んだ。
インテルプレタティオ・ロマーナのもとでは通例アポローと同一視され、エクス=アン=プロヴァンスでは代わりにヘルクレースと重ねられた。最も多く対をなす女神はダモナである。
神話・物語
物語は伝わらない。証拠はほぼすべて碑文であり、ガロ=ローマ期の温泉地に立てられた奉献の形をとる。
ガリア語の神名ボルウォは「熱い泉」「温かい湧き水」を意味する。ケルト祖語の動詞語根 berw-(沸く、醸す。古アイルランド語ベルバズ、中期ウェールズ語ベルウィを参照)に由来し、さらに印欧祖語 bʰerw-(沸く、醸す)に遡る。ラテン語のフェルウェオー(激しく熱い、沸く)、サンスクリットのブルヴァニ(かき乱された、荒々しい)が同根にあたる。アイルランドのバロー川(アン・ヴァルー)もこの語根に結びつけられてきた。
異形ボルモは接尾辞の違い、あるいは異化によって生じたとみられる。派生形にはカルダス・デ・ヴィゼラのボルマニクス、エクス=アン=ディオワとエクス=アン=プロヴァンスのボルマヌスあるいはボルバヌスがある。ユトレヒトではボルウォボエンドゥアという女神名も見つかっている。
図像と象徴
図像として知られるのは二点だけである。アントラン出土の浮彫は、盃と財布と果物の皿を持つ姿を表し、豊かさと富の神という性格を読ませる。ヴィシー出土の浮彫では、岩の上に裸身で坐し、液体があふれる杯を手にしている。湧き出る温泉そのものを杯に写した造形といえる。
主画像は、ブルボン=ランシー出土の奉献碑文である。「ボルウォとダモナに、ティトゥス・セウェリウス・モデストゥスが」と読める大理石の断片で、18世紀にサン=ナゼール教会近くの建物に転用されていたものが回収された。オータンのロラン美術館蔵。この神について知りうることのほとんどが、こうした数行の銘に依っている。
系譜と関係
信仰の中心はガリア中部と東部にあった。筆頭はリンゴネス族の地の温泉町ブルボンヌ=レ=バンと、ブルボン=ランシーである。アントランとエクス=レ=バンからも奉献がある。『ポイティンガー図』に載るローマ期の地名アクアエ・ボルモニスはこの神名から作られており、ブルボン=ランシーとブルボン=ラルシャンボーのどちらを指すかは争われてきた。エミール・トゥヴノは決着不能とみたが、近年はブルボン=ランシー説が優勢である。この神とダモナへの奉献が四点出ているのに対し、ブルボン=ラルシャンボーからは一点も見つかっていないためである。
常の伴侶はダモナで、ブルボンヌ=レ=バンとブルボン=ランシーの双方で対をなす。ただしダモナはこの神に限られず、モリタスグスやアルビウスとも並び、単独の奉献も受けた。神の側がボルマヌスの名を取るディやエクス=アン=ディオワでは、伴侶は女神ボルマナとなる。ボルマナもまた、サン=ヴュルバのように単独で祀られた例がある。
ブルボンヌ=レ=バンでは、奉献者の何人かが自らをリンゴネス族の市民と記している。イベリア半島北西部カルダス・デ・ヴィゼラの二つの祭壇には、関連する名ボルマニクスが刻まれている。
文化的足跡
この神名は、泉に結びついた無数の地名として生き延びた。ブルボン、ブルボンヌ、ブールボン、ボルム、ブールブリアック、ラ・ブールブール、そしてドイツのヴォルムスがそれである。フランスの小河川——ブールブイヨン、ブールバン、ブールビエール——の名も同じ神名に遡る。
なかでもブルボンの地名は、この地を領した一族の名となり、やがてフランス王家ブルボン朝の名になった。ガリアの温泉神の名が、近世ヨーロッパの王朝名として今日まで残っていることになる。神話も物語も伝えなかった神が、地名を通じて最も広く名を残した例といえる。