アーリヤ・プーンカニとバッピリヤン
アーリヤ・プーンカニ · アーリヤッカラカニ · バッピリヤン
海の彼方のアーリヤ国から船で渡ってきたとされる北マラバールの女神と、難破しかけた女神を救って船頭となったムスリムの船乗りバッピリヤン。二柱は同じ聖所でテイヤムとして演じられ、ムスリムの人物が髭と帽子をつけてヒンドゥーの聖所で神として演じられる。
解説
概要
アーリヤ・プーンカニとバッピリヤンは、南インド、ケーララ州北マラバール地方で、同じ聖所に祀られ、神が演者に宿る儀礼テイヤムとして演じられる二柱である。アーリヤ・プーンカニは、海の彼方のアーリヤ国から船で渡ってきたとされる女神で、バッピリヤンは、難破しかけた女神を救って船頭となったムスリムの船乗りである。ムスリムの人物がヒンドゥーの女神の聖所で神として演じられるこの伝承は、ケーララの宗教間の関わりを示す例として知られる。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。二柱が組で祀られるため群記事とする。
海を渡った女神
アーリヤ・プーンカニ(アーリヤッカラカニとも)は、海の彼方のアーリヤ国の王の娘とされる。女神は船でケーララへ渡ろうとしたが、途中で船が難破しかけた。そこに現れたムスリムの船乗りバッピリヤンが女神を救い、以後は女神の船を操って、ともに旅をしたという。
ムスリムの神
ムスリムの人物を演じるテイヤムは、「マーッピラ・テイヤム」と呼ばれる。「マーッピラ」は、ケーララのムスリムを指す言葉である。バッピリヤンを演じる演者は、ムスリムの帽子をかぶり、髭をつけて現れる。ムスリムの人物が、ヒンドゥーの女神の聖所で神として演じられるのである。マラバール海岸は古くからアラブとの交易の拠点であり、ムスリムの船乗りは人々の暮らしのなかの身近な存在であった。シンドのジューレーラールやベンガルのボンビビと同じく、宗教の境をまたいで生まれた信仰である。
この伝承は、しばしば宗教の調和の例として紹介される。ただし、儀礼のなかで二つの宗教がともに祀られていることが、社会のなかに緊張がなかったことを意味するわけではない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、北マラバールのテイヤムの演者である。
関わる伝承
テイヤムとして演じられ、ラームデーヴ・ピールなどとともに、宗教の境をまたぐ信仰の系列をなす。
文化的足跡
マーッピラ・テイヤムは、ケーララの宗教間の関わりを論じる研究のなかで、繰り返し取り上げられてきた。
なおテイヤムは今日も北マラバールで営まれている生きた儀礼であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。