ヴィナーヤキー
ヴィナーヤキー · ガネーシャーニー · ガジャーナナー
象の頭を持つヒンドゥーの女神で、経典にはほとんど語られず像もきわめて少ない。ガネーシャの女性形、そのシャクティ、ヨーギニーの一柱、八番目の母神などの説があるが確定しない。固有の名を持たず、図像が先にあってその意味づけが後から試みられている。
解説
概要
ヴィナーヤキー(Vināyakī)は、象の頭を持つヒンドゥーの女神である。経典にはほとんど語られず、像もきわめて少ないため、どのような神話を持ち、どう祀られていたのかははっきりしない。象の頭を持つことから、一般に知恵の神ガネーシャと結びつけられるが、決まった名さえ持たない。像が先に残り、その意味づけが後から試みられている女神である。
信仰
「ヴィナーヤキー」は、ガネーシャの別名ヴィナーヤカの女性形である。ほかにガネーシャーニー、ガジャーナナー、ガネーシュヴァリーなど、資料によってさまざまな名で呼ばれ、一つに定まっていない。固有の名を持たないこと自体が、この女神の性格をよく表している。
ヴィナーヤキーをどう位置づけるかについては、いくつもの説がある。ガネーシャの配偶者、あるいはその力(シャクティ)とする説。独立した女神とする説。六十四柱のヨーギニーの一柱とする説——ヨーギニーを円形に祀る寺院には、象の頭の女神が置かれていることがある。七柱の母神マートリカーに続く、八番目か九番目の母神とする説。いずれも決め手を欠いており、残された像の意味を後から探っている状態である。
図像と象徴
10世紀頃のビハールの黒い石の像がよく知られている。ヒンドゥー教だけでなく、ジャイナ教や仏教にも象の頭の女神の像があり、チベット仏教にはガナパティフリダヤーという象頭の女神がいる。現存する像はきわめて少なく、かつてある程度広がっていた信仰が、失われてしまったものとみられる。象の頭に女性の身体を持つ姿で表される。本サイトの主画像は、そのビハール出土のガネーシャーニー像(10世紀頃、インド博物館蔵)である。
系譜と関係
ガネーシャと結びつき、ヨーギニーやマートリカーと関わる。ガネーシャの妃とは別の存在である。
文化的足跡
近年、ヴィナーヤキーはヒンドゥー教の女神の多様さを示す例として、研究や美術の場で注目されている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。