ヴァールニー
ヴァールニー · スラー・デーヴィー · Varuni
酒と酩酊を人格化したヒンドゥーの女神で、水の神ヴァルナの娘とされる。乳海攪拌で毒・不運の女神・幸運の女神とともに現れた。酒を受け取った者を「スラ」、拒んだ者を「アスラ」とする語源説があるが、言語学的根拠のない民間語源である。
解説
概要
ヴァールニー(Vāruṇī)は、ヒンドゥー教で酒と酩酊を人の姿で表した女神である。水の神ヴァルナの娘とされ、その名は「ヴァルナの女」を意味するため、娘とも妻とも解される。神々と阿修羅が乳の海をかき回したとき、さまざまな宝や女神とともに海から現れたとされる。
神話・物語
神々と阿修羅が不死の霊薬アムリタを得ようと乳の海をかき回すと、海からは次々にさまざまなものが現れた。恐ろしい毒、不運の女神ジェーシュター、幸運の女神ラクシュミーとともに、酒の女神ヴァールニーも現れた。一説では、阿修羅たちがヴァールニーを受け取ったという。
酒(スラー)を受け取った神々が「スラ」と呼ばれ、それを拒んだ者が「アスラ(スラでない者)」と呼ばれるようになった、と語源を説く文献もある。ただし反対に、酒を受け取ったのが神々だったからこそ「スラ」と呼ばれるのだとする版もあり、いずれも言語学的な根拠のない民間語源である。
ヴァールニーの名は「ヴァルナの女」を意味し、そのため水の神ヴァルナの娘とも、その妻(配偶の女神)とも解された。酒が水の神から生まれたことになる。ヴァルナは西の方角を守る神でもあり、ヴァールニーも西と結びつけられた。西の空の夕焼けを、ヴァールニーの赤とたとえる表現もある。
ヴェーダの祭祀のなかには、醸造した酒スラーを用いるものもあったが、神聖な飲み物ソーマとは区別されていた。後の時代のバラモン教では酒が忌まれるようになり、ヴァールニーも主要な女神にはならなかった。一方で、タントラの一部の流派では、酒をあえて儀礼に用いた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、カルナータカで見つかった8世紀の玄武岩の像で、ヴァルナとその妃(ヴァルナーニー)を表している。
系譜と関係
ヴァルナの娘あるいは妻で、乳海攪拌の際に現れた。
文化的足跡
「ヴァールニー」の名は、今日のインドで酒類の商標名に用いられることがある。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。