ジェーシュター
ジェーシュター · アラクシュミー · Jyestha
乳海攪拌で毒の次、ラクシュミーの前に現れた不運の女神で、名は「最も年長の」を意味しラクシュミーの姉とされる。7〜10世紀の南インドでは豊穣の女神として盛んに祀られたが、以後その崇拝は急速に衰え、避けられる不運の女神としてのみ理解されるようになった。
解説
概要
ジェーシュター(「最も年長の者」)は、ヒンドゥー教の女神で、幸運の女神ラクシュミーの姉とされる。今日では不運の女神として知られ、ラクシュミーの反対の存在アラクシュミーと同一視されることが多い。ところが7世紀から10世紀の南インドでは、豊かさの女神として盛んに祀られていた。その評価は、時代とともに大きく移り変わっている。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
乳海から現れた姉
神々と阿修羅が不死の霊薬を求めて乳の海をかき回したとき、海からはさまざまなものが現れた。まず恐ろしい毒が、次に不運の女神ジェーシュターが、そしてそのあとで幸運の女神ラクシュミーが現れたという。先に生まれたジェーシュターが姉、ラクシュミーが妹であり、「最も年長の者」という名もこの順序を示している。幸運の前に、不運が先に来たのである。
追い出される女神
ジェーシュターはアラクシュミー(「ラクシュミーではない者」、すなわち不運)と同一視され、醜い姿でロバに乗り、箒を持つ姿で描かれる。光の祭ディーワーリーには、ラクシュミーを家に迎えるために、ジェーシュターを追い出す習わしがある。家を掃き清め、古い箒や壊れた箕を外へ出すのである。
かつて祀られた豊かさの女神
しかし7世紀から10世紀にかけての南インドでは、ジェーシュターの像が寺院に数多く祀られていた。パッラヴァ朝の時代の彫像が多く残り、牛の頭をした息子と娘を伴う姿で表されている。この時代のジェーシュターは、豊かさの女神として崇拝されていたのである。
10世紀以降、その崇拝は急速に衰え、ジェーシュターは避けるべき不運の女神としてのみ理解されるようになった。なぜそのような変化が起きたのかは、よく分かっていない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ジェーシュターの像である。
関わる神格・伝承
ラクシュミーの姉で、アラクシュミーと同一視される。一部の地域ではガネーシャの女性形ともみなされた。
文化的足跡
南インドの寺院には今もジェーシュターの古い像が残っているが、その多くは名も知られないまま置かれている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。