金剛薩埵
こんごうさった · ヴァジュラサットヴァ · 金剛薩埵菩薩
大日如来の教えを結集して龍猛に伝えた真言密教付法の第二祖。金剛杵と金剛鈴を持ち方便と智慧の合一を示す。後期密教では本初仏に昇格。チベットではその百字真言が罪障浄化の主要な修法。
解説
概要
金剛薩埵(こんごうさった、梵 Vajrasattva、蔵 rdo rje sems dpa')は、密教の仏教で重んじられる尊格である。名は「金剛(ヴァジュラ)を本質とする者」の意で、ダイヤモンドのように壊れない悟りを求める心(菩提心)を象徴する。日本の真言密教では大日如来の教えを最初に受けて人に伝えた菩薩とされ、チベット仏教では罪障を浄める修法の本尊として広く信仰される。
信仰
真言密教は、教えが伝わった系譜を八人の祖師(付法の八祖)として数える。大日如来・金剛薩埵・龍猛・龍智・金剛智・不空・恵果・空海であり、金剛薩埵は人間の祖師に先立って教えを受けた第二祖にあたる。伝えによれば、金剛薩埵は大日如来の説いた教えを南インドの鉄の塔に納め、のちに龍猛(龍樹)が塔を開いてこれを授かった。仏の説法と人の伝承とをつなぐ位置に置かれている。
真言宗で日々読誦される『理趣経』では、大日如来の説く教えの聞き手であり、その教えを体現する者として中心に立つ。金剛界曼荼羅の成身会では、東方の阿閦如来を囲む四菩薩の第一に座り、九会のうちの理趣会では中尊となる。ヴァジュラパーニ(金剛手)や普賢菩薩と同体とされることも多い。
後期密教では、仏の根源である本初仏と同一視される場合があり、チベットではニンマ派の普賢王如来、新訳諸派の持金剛仏と並んで論じられる。持金剛とはしばしば混同されるが、本来は別の尊格である。
図像と象徴
右手に五鈷杵を胸の前に執り、左手に五鈷鈴を腰のあたりに当てる姿が定型である。金剛杵は衆生を導く手立て(方便)、金剛鈴は智慧を表し、両者をあわせ持つことで方便と智慧の一致を示す。日本の作例では宝冠を戴く菩薩形で、東寺講堂の五大菩薩(839年開眼)では東方に金剛薩埵が置かれる。
チベット仏教では白い身色で表され、配偶の女尊と抱き合う父母仏の姿で描かれることもある。金剛薩埵の百字真言は罪障を浄める修法の中心で、灌頂を受ける前の加行として十万遍唱えることが行われる。本サイトの主画像は、チベットの金剛薩埵像である。
関わる神格・伝承
真言密教付法の第二祖。愛染明王を金剛薩埵の現れとみる説がある。
文化的足跡
チベット仏教の諸宗派で、金剛薩埵の修法は今日も最も広く行われる浄化の実践の一つである。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。