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産女
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YAMATO · 日本神話
産女

産女

うぶめ · 姑獲鳥 · 乳母鳥

鳥山石燕『画図百鬼夜行』(1776年)「姑獲鳥」 PUBLIC DOMAIN

難産で死んだ女の霊とされる妖怪。腰から下を血に染め、道行く人に赤子を抱いてくれと請う。抱きとおせば怪力を授かり、逃げれば祟られると語られた。

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解説

概要

産女(うぶめ)は、出産にまつわる死から生じたとされる妖怪。腰から下を血に染めた女が、夜の辻や川辺、橋の袂に立ち、通りかかった人に赤子を抱いてくれと請う。応じれば福や怪力を授かり、拒んで逃げれば祟られるという。中国の怪鳥である姑獲鳥(こかくちょう)と同一視されたため、「姑獲鳥」の字を当てて「うぶめ」と読む表記も広く行われた。恐ろしい怪異でありながら、子を産みおおせずに死んだ者への憐れみと、子を得ることへの願いとが濃く滲む点に、この妖怪の特徴がある。

由来と物語

説話における初見とされるのは、『今昔物語集』巻第二十七の「頼光郎等平季武、産女に値ふ語」である。源頼光の郎等である平季武が、肝試しとして夜の川を渡ったところ、川中で女に呼び止められて赤子を抱かされる。女は「その子を返せ」と呼びながら追ってくるが、季武は動じずに渡りきった、という武勇譚として語られている。

近世に入ると、産女の話は書物のうえで整えられていく。『奇異雑談集』(1687年)は、懐妊したまま死んだ女をそのまま埋葬し、のちに腹の子が生きて生まれた場合に、その魂魄が変じたものだと説く。『古今百物語評判』(1686年)は「産の上にて身まかりたりし女、その執心このものとなれり」と記し、腰から下は血に染まり「をばれう、をばれう」と鳴くとする。著者の山岡元隣は、腐った魚や鳥から虫が湧くのを目にしている以上、妊婦の遺骸から怪鳥が生じることもありうると論じており、怪異を自然の理の延長として説明しようとする近世知識人の姿勢がうかがえる。

抱かされた赤子が次第に重くなり、やがて石や石塔、木の葉、地蔵に変じるという語りも多い。だが話の多くは恐怖では終わらない。無事に抱きとおした者には、黄金の袋や尽きぬ宝が与えられ、あるいは五十人力・百人力が授けられる。翌朝、顔を洗って手拭いを絞ったら手拭いが二つに裂け、驚いてもう一度絞ると四つに裂けて、そこではじめて怪力を得たと知った——そういう話が伝わり、その男はのちに大力の力士として身を立てたという。

呼び名は土地によって変わる。九州ではウグメ、壱岐ではウンメ、福島県の南会津ではオボという。オボに出会ったときは身につけた布切れを投げれば逃げる隙ができ、赤子を抱かされたときは顔を反対へ向けて抱けば噛まれずに済む、といった対処法まで語り伝えられている。

図像と象徴

産女の姿かたちは、江戸の妖怪画によって定型を得た。佐脇嵩之『百怪図巻』(1737年)の「うぶめ」が早い例で、絵巻の跋によれば狩野元信の本を模したものだという。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』(1776年)は「姑獲鳥(うぶめ)」の名でこれを描き、石燕自身、狩野元信の百鬼夜行の図を参照したと述べている。いずれも、赤子を抱き、腰から下を血に染めた女という共通の型を示す。血染めの腰巻きは、産で死んだ女は血の池地獄に堕ちるという中世以来の観念に支えられた表現である。

鳥として語られる系統もある。『和漢三才図会』は「姑獲鳥」の項で、中国では荊州に、日本では西国の海浜に現れるとし、九州では夜しぐれの降る晩に燐火を伴って大きな鷗に似たものが現れ、通りすがりの男に子を負ってくれと頼むと伝える。乳母鳥(にゅうぼちょう)という異名は、攫った子に乳を飲ませようとする習性によるといい、明の『本草綱目』が記す姑獲鳥——胸に乳を備え、人の子を奪って自分の子として育てる鳥——を踏まえている。南方熊楠は、燐光を放つ鳥としての産女は中国には見られない日本固有の伝承だとし、その正体を青鷺とする林羅山の記述を引いた。人の姿と鳥の姿という二つの系統が、「うぶめ」という一つの語のもとで重なっている。

錦絵では、『今昔物語集』の一段が繰り返し画題となった。葛飾北斎の「季武と産女」、月岡芳年『和漢百物語』の「主馬介卜部季武」がその例で、川を背に、赤子を抱いた女と動じない武者を向かい合わせる構図をとる。

関わる伝承と信仰

近い性格をもつ怪異は多い。海辺に現れて子を抱かせる濡女は産女の変異型とみられ、こちらは牛鬼を伴って人を襲う点が異なる。茨城県のウバメトリは、干した子どもの衣に毒のある乳をつけていくという。ローマのストリクスやアイヌのケナシコルウナルペのように、乳飲み子を狙う夜の鳥という観念は各地に見られるが、それぞれ別個の伝承であって、共通の起源に還元できるものではない。

信仰の側に転じた例もある。福島県柳津町にはオボから赤子を預かって長者になった男の伝説が残り、その地に「おぼ抱き観音」が祀られた。静岡市葵区の産女という地名には安産で知られる観音堂がある。祟る霊は、産を守る側にも回っている。

文化的足跡

柳田國男は産女を路傍の怪物と呼び、気に入った相手にだけは大きな幸福を授けるものだと述べた。抱かされる子を通じて語られているのは、優れた子を得たいという古い社会の願いであると柳田は読む。宮田登は、怪力を授ける話の背後に、子をこの世へ戻したいという死んだ母の情念を見た。

京極夏彦の小説『姑獲鳥の夏』は表題にこの妖怪の漢名を掲げ、産女をめぐる伝承そのものを作品の骨組みに据えた。現代の漫画やゲームにも登場するが、そこで強調されるのはおおむね怪異としての恐ろしさであり、福を授ける産女の相は伝承のなかに残されている。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q3046467 — 骨格データの出典
Commons
Ubume — 図像カテゴリ