トゥイスト
トゥイスト · トゥイスコ · Tuisto
タキトゥス『ゲルマーニア』が伝えるゲルマン諸族の神的な祖先。大地から生まれ、名は「二重の者」=両性具有を意味するとされる。北欧のユミル、インドのヤマと同じく、原初の存在が「双子」と呼ばれる印欧の型に属する。
解説
概要
タキトゥス『ゲルマーニア』(後98年)によれば、トゥイスト(Tuisto、トゥイスコとも)はゲルマン諸族の伝説上の神的な祖先である。
この人物は今なお学術的な議論の対象であり、その大半は語源上の関連と、後代の(とりわけ北欧の)ゲルマン神話の人物との比較に集中している。
記述
『ゲルマーニア』第二章は次のように記す。
「彼らは古い歌において——それが彼らの唯一の歴史の伝統である——大地から生まれた神トゥイストを称える。彼らはその子マンヌスを、民族の始祖にして創建者とする」
名
写本には二つの主要な異読——トゥイストとトゥイスコ——がある。
トゥイストは、ゲルマン祖語の *twis-(「二」「二重の」)に由来し、「両性具有の者」あるいは「二重の者」を意味するとする説が有力である。
大地から生まれ、単独で子をもうけるという設定は、両性具有の存在にふさわしい。北欧の原初の巨人ユミルも、その腋の下と脚から子をもうけた。
ユミルの名も「双子」を意味するとされ、印欧祖語の *yemo-(「双子」)に遡る。インドのヤマ、イランのイマも同語源である。原初の存在が「双子」あるいは「二重の者」と呼ばれることは、印欧語族の創世神話に共通する。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
タキトゥスの一節のみが資料であるという点が、この神格を規定する。ゲルマン人自身の記録はなく、ローマ人の観察を通してのみ知られる。
関わる神格・伝承
子はマンヌス。孫からインガエウォネス、ヘルミノネス、イストゥアエウォネスの三族が出た。
ユミル、ヤマ、イマと語源上の関係が論じられる。
文化的足跡
近世以降、ドイツの人文主義者はトゥイストを「トイチュ」(ドイツ)の名祖と解した。この語源説は今日では否定されているが、ドイツ民族の起源をめぐる言説において長く影響を持った。