マンヌス
マンヌス · Mannus
タキトゥスが伝えるゲルマン諸族の祖で、トゥイストの子。三人の子から北海沿岸・内陸・ライン流域の三部族が出たとされる。名は「人」を意味し、インドの人類の祖マヌと同語源である。
解説
概要
ローマの著述家タキトゥスによれば、マンヌス(Mannus)はゲルマン諸族の創世神話における人物であった。タキトゥスのみが、これらの神話の資料である。
タキトゥスは、マンヌスがトゥイストの子であり、三つのゲルマン部族インガエウォネス、ヘルミノネス、イストゥアエウォネスの祖であると記した。
記述
『ゲルマーニア』第二章は次のように続ける。
「マンヌスに三人の子があり、その名から、大洋に最も近い者はインガエウォネス、内陸の者はヘルミノネス、その他はイストゥアエウォネスと呼ばれる」
タキトゥスは、この三分がすべてではないとする者もあり、マルシ、ガンブリウィイ、スエビ、ウァンディリイといった名を挙げる者もあると付け加える。
名
マンヌスの名は、ゲルマン祖語の *mann-(「人」)に由来する。英語の man、ドイツ語の Mann と同語源である。
「人」を意味する語が、人類の祖の名になっている。インドのマヌ——人類の祖にして最初の王——と同語源であるとする説が広く受け入れられている。印欧祖語の *manu-(「人」)に遡る。
マヌとマンヌスが同じ名を持つことは、印欧語族の共通の伝承を示す証拠として、比較神話学において重視されてきた。
三部族
インガエウォネス(北海沿岸)、ヘルミノネス(内陸のエルベ川流域)、イストゥアエウォネス(ライン川流域)の三分は、ゲルマン諸族の言語的な分類と部分的に一致する。
タキトゥスの記述が、実際の部族の自己認識を伝えるのか、ローマ側の整理であるのかは議論がある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、《マンヌスの息子たち》の図である。
三分の祖という構造は、聖書のノアの三子(セム、ハム、ヤペテ)と同じ型に属する。中世の系譜学者は、両者を接続してゲルマン人を聖書の系譜に組み込んだ。
関わる神格・伝承
父はトゥイスト。子から三部族が出た。インドのマヌと同語源。
文化的足跡
「マンヌス」は、19世紀から20世紀のドイツにおいて、ゲルマン民族の起源を論じる文脈で繰り返し引かれた。同名の学術誌『マンヌス』は、この関心を反映している。