テオノエー
テオノエ · Theonoe · Theonoē
ギリシア神話の女性の名。予言者テストールの娘で海賊にさらわれ、男装した姉妹と父との取り違えを経て再会する者、およびエジプト王プローテウスの娘で予言者が知られる。
解説
概要
テオノエー(Θεονόη)は、ギリシア神話の女性の名である。主として二人が知られる。
同名の女性たち
予言者テストールの娘のテオノエーは、カルカースやレウキッペーのきょうだいである。ヒュギーヌスが伝える話によれば、テオノエーは遊んでいるところを海賊にさらわれ、カーリアの王イーカロスに側女として売られたが、のちに王妃となった。父テストールは娘を探す旅に出たが、船が難破し、カーリアで奴隷となった。姉妹のレウキッペーがデルポイで家族の行方を尋ねると、アポローンの神官として国々を巡るよう告げられた。レウキッペーは髪を剃って男の姿となり、国々を旅するうちにカーリアへたどり着いた。
ところがテオノエーは、レウキッペーを男と思い込んで恋をした。レウキッペーは王妃が自分の姉妹だとは気づかず、自分が女であることを明かして拒んだ。怒ったテオノエーはレウキッペーを閉じ込め、年老いた奴隷に剣を渡して殺すよう命じた。その奴隷こそが、父テストールであった。テストールは娘を殺すくらいなら自ら死のうとし、レウキッペーが正体を明かして父を止めた。テストールは、自分に命じられたのは王妃を殺すことだったと思い違い、王妃を殺そうとしたところで、王妃が自らテオノエーだと名乗った。こうして家族は再会し、王イーカロスは三人を故郷へ送り返したという。
エジプトの王プローテウスとプサマテーの娘のテオノエーは、テオクリュメノスのきょうだいで、予言の力を持つ。エウリピデースの『ヘレネー』に登場し、エジプトにとどまっていたヘレネーと、夫メネラーオスの脱出を助ける。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
第一のテオノエーの物語は、ヘレニズム期の小説的な構成をとる。海賊、難破、男装、取り違え、そして再会。ギリシア悲劇の「再認」(アナグノーリシス)の技法が、幾重にも折り重ねられている。
関わる神格・伝承
第一の父はテストール、兄弟はカルカース。第二の父はプローテウス、母はプサマテー。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。エウリピデース『ヘレネー』の登場人物として、第二のテオノエーが知られる程度である。