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饕餮
PLATE — 饕餮
SINÆ · 中国神話・道教
饕餮

饕餮

とうてつ · 狍鴞 · 饕餮文

鼎(商後期・前13世紀頃)/The Cleveland Museum of Art, CC0 CC0

中国神話の怪物。飲食をむさぼる貪欲の象徴とされ四凶の一に数えられる。殷周の青銅器を飾る獣面文様が後世この名で呼ばれ、その名が広く知られた。

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解説

概要

饕餮(とうてつ、饕餮 / tāotiè)は、中国の伝承に語られる怪物である。「饕」は財を貪ること、「餮」は食を貪ることを意味し、名そのものが貪欲を表す。牛か羊の体に、曲がった角、虎の牙、人の爪、人の顔をもつとされる。何でも呑み込むというその性質は、のちに邪をも喰らうと解され、辟邪の意味を帯びるようになった。ただし、こんにち「饕餮」の名で最もよく知られているのは怪物そのものではなく、殷周の青銅器を飾る獣面の文様のほうである。この名と文様の結びつきには、後述するとおり慎重な検討を要する。

四凶の一つとして

文献上、饕餮の名は『春秋左氏伝』文公十八年に現れる。舜が追放した四人の悪しき者――渾敦(こんとん)・窮奇(きゅうき)・檮杌(とうごつ)・饕餮――のうちの一つで、飲食を貪り財貨を求めてやまない縉雲氏の不肖の子として語られる。ここでの饕餮は獣というより、貪欲そのものを人格化した存在である(四凶)。

東方朔に仮託された『神異経』は、これを獣として描き直す。西南の方に、体に毛が多く頭に豕(いのこ)を戴く者がおり、狼のように貪欲で財を積むことを好み、弱い者から奪い、群れを恐れて孤立した者を襲う――その名を饕餮という、と記す。『山海経』北山経に見える狍鴞(ほうきょう)を饕餮と同一視する説もあり、羊の身に人面、目は腋の下にあり、虎の歯と人の爪をもって人を食うとされる。饕餮の姿として一般に語られる特徴の多くは、この狍鴞の記述に由来する。

饕餮文が蚩尤(しゆう)を表すとする文献があること、両者ともに炎帝の後裔とされることから、本来は蚩尤と同一の存在だったのではないかとする説もある。南宋の羅泌は、黄帝が蚩尤の首を刎ね、その像を青銅器に鋳て貪欲を戒めたと述べており、これが饕餮=蚩尤説の典拠となっている。もっとも、これは宋代の解釈であって、殷周の当事者の理解ではない。

青銅器の獣面文

殷から西周にかけて、鼎(てい)・觚(こ)・尊(そん)といった祭祀用の青銅器や玉器の表面を、正面向きで左右対称の獣面が飾る。大きく見開いた一対の眼を中心に、角・眉・鼻・牙が渦巻く線で構成され、下顎を欠くことが多い。器を三方から見つめ返してくるようなこの意匠は、殷周美術の最も強い特徴である。良渚文化の玉琮には、同種の獣面のすぐ下に人面を彫ったものが出土しており、系譜の古さがうかがえる。

問題は、この文様が当初から「饕餮」と呼ばれていたわけではない、という点である。殷周の人々がこの意匠を何と呼んだかを示す資料はなく、甲骨の卜辞も手がかりを与えない。「饕餮文」の呼称は、『呂氏春秋』先識覧が「周の鼎に饕餮を著す。首有りて身無し」と述べたのを根拠に、宋代の金石学(『宣和博古図録』など)が青銅器の獣面に当てはめたものである。この事情から、林巳奈夫はこれを「獣面文」と呼ぶことを主張した。文様の意味についても、祖霊と人とを媒介する仮面とみる説、鋳造技法の制約から生じた造形とみる説など、解釈は今も分かれている。「饕餮文」という名は便宜的な呼称であって、殷周の信仰内容を言い当てたものではない。

後世の受容

明代には、饕餮は竜生九子の一つに数え直された。楊慎の挙げる一覧では、饕餮は飲食を好むがゆえに鼎の表面に据えられる、と説明される。四凶の一つという悪しき出自は薄れ、器物の意匠を分類する枠組みのなかに収まったのである。青銅器の文様がのちに饕餮と呼ばれ、その饕餮がさらにの子とされるという、二重の再解釈がここには重なっている。

文化的足跡

饕餮という語は、こんにちの中国語でも「食いしん坊」を指す日常語として生きている。美術史では、殷周青銅器の獣面文を語るうえで避けて通れない語であり続けているが、専門の文献では「獣面文」の語が併用されることが多い。現代の映画・漫画・ゲームでは、貪欲を体現する巨大な怪物として造形されることが多いが、これらは名と語義から膨らませた創作であり、伝承上の記述とは区別して捉える必要がある。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q758058 — 骨格データの出典
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Taotie — 図像カテゴリ