ステネボイア
アンテイア · Stheneboea · Stheneboia
ティーリュンス王プロイトスの妻。ベレロポーンに恋して拒まれ、逆に夫へ讒訴した。ホメーロスはアンテイアと呼ぶ。エウリピデースが悲劇を書いたが散逸した。
解説
概要
ステネボイア(Σθενέβοια / Stheneboia)は、ティーリュンス王プロイトスの妻である。客人のベレロポーンに言い寄って拒まれ、逆に夫へ彼を讒訴した。ホメーロスは彼女をアンテイアと呼ぶ。
神話・物語
多くの資料ではリュキア王イオバテースの娘とされる(ホメーロスでは王の名は語られない)。双子の兄弟アクリシオスとの争いに敗れてアルゴスを追われたプロイトスは、リュキアの王に身を寄せ、その娘を妻とした。王はリュキアの軍勢でプロイトスを故国に送り返し、プロイトスはティーリュンスを得た。
のちに殺人の穢れを負ったベレロポーンがティーリュンスに来て、プロイトスに清めを受けた。王妃は彼に恋をして言い寄ったが、拒まれると、ベレロポーンが自分に迫ったと夫に訴えた。客人を自ら殺すことをはばかったプロイトスは、彼に封をした書板を持たせて舅のもとへ送った。書板には持参人を殺すよう記されていた(『イーリアス』第6巻)。
結末は伝えによって異なる。ベレロポーンがペーガソスに乗って戻り、ステネボイアを空へ連れ出して海に突き落としたとも、自らの企みが露見して命を絶ったともいう。エウリーピデースの失われた悲劇『ステネボイア』は、前者の筋を扱ったとみられる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
退けられた女が讒訴するという筋は、パイドラーとヒッポリュトス、アステュダメイアとペーレウス、そして旧約聖書のポティファルの妻とヨセフにも見られる。
系譜と関係
父はイオバテース(ほかにアムピアナクス、アペイダースとする伝えもある)。夫はプロイトス。子はイーピノエー、イーピアナッサ、リューシッペーの三人の娘と、息子メガペンテース。娘たちは狂気に陥り、予言者メラムプースに癒された。
文化的足跡
『イーリアス』第6巻のこの挿話は、書板に記された文字が物語に登場する、ホメーロスでほとんど唯一の場面として、ギリシアにおける文字の使用をめぐる議論でたびたび引かれる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。