シフカ=ブールカ
シフカ・ブールカ · シヴカ=ブールカ · シフコ=ブールコ
ロシアの昔話に現れる魔法の馬。名は葦毛・鹿毛・栗毛という三つの毛色を並べたもの。右の耳から入って左の耳から出ると、愚か者のイワンは美しい若者に変わる。
解説
概要
シフカ=ブールカ(Си́вка-бу́рка / Sivka-Burka)は、ロシアの昔話に現れる魔法の馬である。名は一つの語ではなく、馬の毛色を並べたものである。シフカは葦毛、ブールカは鹿毛、そしてしばしば третье の名として添えられるカウルカは栗毛を指す。呼び声の定型は「シフカ=ブールカ、予言のカウルカよ」——三つの毛色に「予言の」という形容が付く。
スラヴ神話の他の項目に挙げた存在とは層が違う。この馬は信仰の対象ではなく、ロシア民話集に収められた魔法昔話の登場物である。プードシ地方の語り手たちに最も好まれた話で、二十を超える異文が知られている。
登場する物語
父に三人の息子があった。死に際して父は、三日のあいだ墓を訪ねよと言い残す。上の二人は怠け、末の「愚か者のイワン」だけがその言いつけを守った。褒美として父は、魔法の馬の秘密を明かす。野に出て呼べば駆けつける馬がいる。その右の耳から入り、左の耳から出れば、美しい若者に変わる、と。
一方、皇帝は娘の婿を選ぶことにした。高い楼閣に座る姫のもとまで馬で跳び上がり、口づけできた者に嫁がせる、という条件である。イワンはシフカ=ブールカの助けでこれを成し遂げ、姫は指輪で彼の額に印を捺す。イワンは駆け去り、家に戻って竈の上に寝転がる。翌日、姫は男たちを集めて額を検め、印を見つけて彼を許婚と呼んだ。
この筋は国際的な昔話分類のATU分類530番「楼閣の姫のもとへ跳ぶ」に当たる。ヨーロッパ全域に類話があり、南北アメリカ、アラブ、トルコ、コーカサス、インドにも及ぶ。ロシアの異文だけで六十、ウクライナで四十一、ベラルーシで十四が数えられている。
図像と象徴
昔話は馬の姿をほとんど描かない。名が示すのは色だけであり、そこにあるのは葦毛と鹿毛と栗毛という、まだら模様のような取り合わせである。この不揃いさこそが、ふつうの馬ではないことの徴なのだろう。
象徴の中心は、耳を通る変身にある。右から入って左から出る。この所作は、境を越えて別の存在になるという昔話の骨法をそのまま形にしている。イワンは魔法を覚えるのでも、道具を手に入れるのでもない。馬の体の内側を通り抜けることで、別人になる。
もう一つ、この馬が父の墓から与えられるという点も見過ごせない。死者からの贈り物が生者を助けるという構図は、ドモヴォーイが一族の死者だとされたのと同じ地層にある。
本ページに掲げたのは、ボリス・ズヴォールィキンが1917年に描いた図版である。
関わる伝承
呼び名は昔話の外へも広がった。「シフカから、ブールカから、予言のカウルカから」という句は、まったく別の話の語り出しに用いられる決まり文句となり、ロシア・ベラルーシ・ウクライナの多くの昔話がこの一節から始まる。
魔法の馬という役どころは、ロシアの物語のなかで繰り返し現れる。エルショーフの韻文物語『せむしの小馬』(1834年)の小さな醜い馬も、コシチェイを蹴り殺す「マリヤ・モレヴナ」の馬も、同じ系譜にある。乗り手より賢く、先を知り、危機のたびに助言する——スラヴの昔話において、馬は乗り物ではなく助言者である。
文化的足跡
紙に記録されたのは18世紀半ばで、広く知られるようになったのはアファナーシエフの集成を通じてである。ラトゥイシェフ、ブラートフ、アレクセイ・トルストイによる再話が重ねられ、トルストイの遺した資料には二十六の異文があった。ルボーク版の絵本としても大量に刷られ、その再話がまた口承に戻っていった。
ソ連期以降はアニメと絵本の定番であり、「シフカ=ブールカ」は今日のロシア語で、頼れば必ず来てくれる存在をたとえる言い回しとしても生きている。