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尻目
PLATE — 尻目
YAMATO · 日本神話
尻目

尻目

しりめ · ぬっぽり坊主

与謝蕪村『蕪村妖怪絵巻』より(宝暦4年/1754年ごろ) PUBLIC DOMAIN

与謝蕪村が絵巻に描いた、顔に目鼻のない怪。振り向くと尻に大きな光る目が開いていたという、のっぺらぼうの一種である。

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解説

概要

尻目(しりめ)は、与謝蕪村の『蕪村妖怪絵巻』(宝暦四年/一七五四)に描かれた妖怪である。京の帷子辻に現れたとされ、顔には目鼻がなく、雷のように光る目が尻についているのを特徴とする。のっぺらぼうの一種として扱われ、絵巻自体では「ぬっぽり坊主」の名で知られる。

「尻目」という表記は、水木しげるの著作を通じて広まったものである。江戸の典拠にこの名が付されていたわけではない点に注意がいる。名がひとつに定まっていない妖怪であり、呼び名の来歴そのものが、この妖怪をどう扱うかを左右する。

伝わる姿

蕪村の絵は、着物をはだけて身をかがめ、こちらへ尻を向ける人物を描く。顔に当たる部分はのっぺりとして目鼻がなく、代わりに尻の中央に大きな目が開いている。水木しげるの著述では、人に会うときは全裸であり、脱いだ衣を抱えていると説明される。

今日ひろく紹介される「夜道で侍を呼び止め、着物を脱いで尻の目を見せた」という筋立ては、近代以降の解説を通じて流布したものである。蕪村の絵巻に詳しい説明は伝わっておらず、絵が先にあって物語が後から整えられた形になっている。人に危害を加えるという伝えはなく、驚かせること自体が目的であるかのように語られる。

図像と象徴

顔から目を奪い、尻に置き換えるという構図は、笑いと不気味さを同時に成り立たせる。顔がないという不安を、身体の別の場所に目を置くことでいっそう強める作りであり、単なる滑稽画ではない。

描き手が俳人であることも見逃せない。与謝蕪村は俳諧と絵画の双方で名を成した人物であり、この絵巻は余技として描かれたものである。俳諧の滑稽と写生の眼が、妖怪の造形に持ち込まれている。同時代の鳥山石燕が古典の語句から妖怪を起こしたのに対し、蕪村は視覚的な思いつきから怪を立ち上げている。

現れる場所として伝えられる帷子辻は、京の西郊にあたる。都市の縁に怪異を配するのは、百鬼夜行絵巻以来の妖怪画に共通する構えである。

関係する妖怪

顔に目鼻がないという点でのっぺらぼうの系列に属する。のっぺらぼうが人を驚かせるだけの妖怪であるのと同様、尻目にも害をなす伝えはない。より広く見れば、肉塊の妖怪ぬっぺふほふとも造形上の近さが指摘されるが、こちらは顔の襞が目鼻に見えるだけで別種とされる。

文化的足跡

近代に妖怪事典が編まれるなかで、蕪村の絵は「尻目」の名とともに紹介され、現代の妖怪図鑑やゲームにも取り上げられるようになった。奇抜な造形ゆえに単独で人気を得た妖怪だが、その名も物語も近代に整えられたものであり、江戸の絵巻が伝えるのは一枚の絵と「ぬっぽり坊主」という呼び名だけである。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q3536226 — 骨格データの出典