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のっぺらぼう
PLATE — 野箆坊
YAMATO · 日本神話
野箆坊

のっぺらぼう

のっぺらぼう · 野箆坊 · ぬっぺりほう

竜斎閑人正澄『狂歌百物語』より(嘉永6年/1853年) PUBLIC DOMAIN

顔に目・鼻・口のない日本の妖怪。人を驚かせるだけで害はなく、小泉八雲の怪談『貉』によって国外にも広く知られた。

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解説

概要

のっぺらぼう(野箆坊)は、顔に目・鼻・口のない妖怪である。外見は人に近く、振り向いた顔がのっぺりとして何もないという一点で人を驚かせる。害を加える話はまれで、驚かすこと自体がこの妖怪の働きである。落語・講談・妖怪絵巻に古くから登場し、比較的よく知られた妖怪であった。凹凸のない平らな状態を「のっぺらぼう」と形容する用法も、ここから生まれている。

登場する話

寛文三年(一六六三)の奇談集『曽呂利物語』には、京の御池町に身長七尺ほどののっぺらぼうが現れたとある。正体については何も記されない。明和四年(一七六七)の『新説百物語』では、京の二条河原に「ぬっぺりほう」という顔に目鼻口のない化物が現れ、襲われた者の服に太い毛が何本も付いていたとされる。獣が化けたものであることをうかがわせる描写である。民間伝承としては大阪府や香川県などにも伝わる。

この妖怪を世界的に知らしめたのは、小泉八雲の『怪談』に収める「貉(むじな)」である。夜の紀伊国坂で泣く女に声をかけると顔に目鼻がなく、逃げ込んだ蕎麦屋の主人までもが同じ顔になっている——という「再度の怪」の型をとる。今日、のっぺらぼうといえばムジナや狐狸の仕業とされることが多いが、この結びつきも八雲の作品の表題を経由して広まったとみられている。

古い層としては、『源氏物語』「手習」に「昔いたという目も鼻もない女鬼」への言及があり、顔のない怪の観念が平安期に遡ることを示す。『遠野物語拾遺』には、綾織村駒形神社の縁起として、旅人が目鼻もないのっぺりとした子どもに赤頭巾をかぶせて背負ってきたという話が伝えられている。こちらには口があるとされ、伝承のなかでも姿は一様でない。

図像と象徴

本項に掲げるのは、竜斎閑人正澄の『狂歌百物語』(嘉永六年/一八五三)に描かれたのっぺらぼうである。顔の平面をそのまま描くという、引き算によって成り立つ図像であり、造形を足していく他の妖怪とは方法が逆になっている。

顔がないことは、相手が誰であるかを確かめられないことを意味する。夜道で人に出会うという日常の場面が、顔の欠落ひとつで一変する。恐怖の源が姿の異様さではなく、識別の不能にある点で、のっぺらぼうは近代的な不安に接続しやすい妖怪でもある。

類する妖怪

与謝蕪村が描いた尻目は、顔に目鼻がなく尻に光る目をもつもので、絵巻では「ぬっぽり坊主」と呼ばれる。お歯黒べったりは、目も鼻もないがお歯黒の口だけがあんぐりと開く女の妖怪で、のっぺらぼうの類とされる。肉塊の妖怪ぬっぺふほふとも近いとされてきたが、こちらは襞が顔に見えるだけで別種とみる意見が有力である。

文化的足跡

顔がないという単純で強い着想ゆえに、のっぺらぼうは近代以降の怪談・小説・映像作品に繰り返し取り上げられてきた。八雲の「貉」は英語圏で日本の怪談の代表作として読まれ、この妖怪の名を国外にも広めている。現代の創作では顔を奪う存在として翻案されることも多いが、江戸の資料が伝えるのは、驚かせて去るだけの、ほとんど無害な怪である。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q1353709 — 骨格データの出典