サバジオス
サバジオス · サバディオス · Sabazios
フリュギア・トラーキアの騎馬の天空の父神で、ローマ帝国の各地に広まった。蛇を象徴とし、祝福の仕草をした青銅の手が祭具として各地から出土する。ギリシア人はゼウスやディオニューソスと解し、ローマではユダヤ教の神と混同された。
解説
概要
サバジオス(Sabazios)は、フリュギア人とトラーキア人が崇めた騎馬の天空の父神である。起源をトラーキアとする説とフリュギアとする説があり、今日ではフリュギア起源とみる研究者が多い。のちにローマ帝国の各地に広まり、とりわけ中央バルカンで好まれた。
ギリシア人はサバジオスをゼウスともディオニューソスとも解したが、ローマ時代に至るまで、馬に乗って杖を振るう姿で表された。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、サバジオス崇拝に用いられた青銅の手である。
最も特徴的な遺物は「サバジオスの手」——祝福の仕草(親指・人差指・中指を立てる)をした青銅の手で、その表面に松毬、蛇、蛙、亀、蜥蜴、鷲、天秤などが付けられている。数十例が帝国各地から出土しており、儀礼用の杖の先端に付けられたとみられる。
蛇がサバジオスの主要な象徴である。アルノビウスによれば、サバジオスの密儀では黄金の蛇が入信者の懐に入れられ、下から取り出された。ゼウスが蛇の姿でペルセポネーと交わったという神話が、サバジオスに帰された。
密儀
サバジオスの密儀は、前5世紀にアテーナイに伝わり、デーモステネースは政敵アイスキネースの母がこの密儀を営んだと嘲った。夜の儀礼や蛇を用いる異国の密儀として、アテナイの知識人には好まれなかった。
ウァレリウス・マクシムスによれば、前139年、「ユーピテル・サバジオス」を崇めてローマの風俗を乱したとして、ユダヤ人がローマから追放された。「サバジオス」とユダヤ教の神の呼び名「サバオト」(万軍の主)の音の近さが、この混同のもとになったとみられる。