般若菩薩
プラジュニャーパーラミター · 般若波羅蜜菩薩 · 般若仏母
般若波羅蜜(智慧の完成)を神格化した女尊で「諸仏の母」と呼ばれる。智慧の完成から仏が生まれるという観念による。経巻を持物とし、教えと神が同一である。ジャワのシンガサリ出土像が名高い。
解説
概要
般若菩薩(はんにゃぼさつ、梵 Prajñāpāramitā)は、仏教における般若波羅蜜——智慧の完成——を神格化した女尊である。般若波羅蜜菩薩、般若仏母とも。
プラジュニャーパーラミターは大乗仏教における「智慧の完成」あるいは「超越的な知」を意味し、実在の本性を見る完成された見方を指すとともに、『般若心経』『金剛般若経』といった般若経典群をも指す。
仏母
般若波羅蜜は「諸仏の母」と呼ばれる。智慧の完成から仏が生まれるという観念により、この抽象的な徳が女尊として人格化された。
『八千頌般若経』は「般若波羅蜜は諸仏の母、諸仏を生む者である」と説く。抽象概念が母として表されるのは、仏教における女性原理の理解を示す。
チベット仏教では、般若仏母(ユムチェンモ)として重要な位置を占め、諸尊の母として曼荼羅に配される。
日本における位置
胎蔵界曼荼羅の持明院に、般若菩薩として配される。一面六臂で、経巻を持つ姿で表される。
真言宗において般若菩薩の修法(般若菩薩法)が行われ、智慧の獲得を祈った。
図像と象徴
固有の図像は存在するが、本サイトは主画像を掲げない。
インド・ジャワの作例では、二臂で説法印を結び、蓮華の上の経巻を伴う菩薩形の女尊として表される。ジャワのシンガサリ出土の般若波羅蜜像(13世紀)は、東南アジアの仏教彫刻の最高傑作の一つとされる。
チベットでは四臂で、二手に説法印、他の二手に経巻と金剛杵を持つ。
経典が持物であるという点が、この尊格を規定する。般若経典そのものが崇拝の対象であり、その人格化がこの女尊である。教えと神が同一である。
関わる神格・伝承
諸仏の母。ターラー、ヴァスダーラーと同じく、抽象的な徳を人格化した女尊の系列に属する。
文殊菩薩が智慧を司る男性の菩薩であるのに対し、般若菩薩は智慧そのものの女性形である。
文化的足跡
ジャワの般若波羅蜜像は、シンガサリ王朝の王妃ケン・デデスの肖像とする伝承があり、インドネシア国立博物館の代表的な収蔵品である。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。