パルナシャヴァリー
パルナシャヴァリー · ロマギュンマ · 葉衣観音
古代インドのシャバラ族の土着女神が、疫病を防ぐ仏教の尊格として取り入れられたもの。葉の衣をまとい三面六臂。ターラーの従者。パーラ朝の像ではシータラーを従える。近年の感染症流行で修法が営まれた。
解説
概要
パルナシャヴァリー(サンスクリット語 Parṇaśabarī、チベット語ロマギュンマ)は、古代インドのシャバラ族の土着の神格で、疫病の流行に対する効果的な守護を与えると信じられる、病の仏教の尊格として取り入れられた。
名は「葉をまとうシャバラ族の女」を意味する。シャバラは森に住む狩猟民であり、パルナシャヴァリーはその女神であった。
図像と伝承
パルナシャヴァリーは、ダッカで発見されたパーラ朝の像のいくつかにおいて、主要な女神として描かれ、ヒンドゥーの神格ジュヴァラースラとシータラーを従えている。この二柱はいずれも病に関わるヒンドゥーの神格である。インドでは、クルキハルの埋蔵品に10〜12世紀のパルナシャヴァリーの青銅像七体が含まれる。
仏教では、パルナシャヴァリーは母神ターラーの従者として描かれる。パルナシャヴァリーという語を、シャバラ族が勢力を持ったヴィンディヤ地方と神格を結びつける試みとみる説もある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、パルナシャヴァリー像である。
黄色の身色で、三面六臂、葉の衣をまとい、弓矢、斧、羂索、金剛杵を持つ。片膝を立てて坐す。葉の衣は、名のとおり森の民の衣である。
土着の女神が疫病の守護神になるという経緯が、この尊格を規定する。森の民の神が、森に由来する病——熱病、疫病——を防ぐ者として仏教に取り込まれた。
関わる神格・伝承
ターラーの従者。ヒンドゥーのシータラー、ジュヴァラースラと図像上結びつく。
疫病の守護神という点で、ババルアイエなど各地の病の神格と共通する構造を持つ。病をもたらす力が、病を防ぐ力として祀られる。
文化的足跡
2020年以降の感染症流行に際して、チベット仏教の諸寺院でパルナシャヴァリーの修法が営まれ、この尊格への関心が再び高まった。
なおチベット仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。