ニンギルス
ニンギルス · ニンギルス神 · Ningirsu
ラガシュ国家の主神でニヌルタと同一視される。グデアが夢の告げに従って神殿エニンヌを建てた次第は、シュメール語最長の文学作品の一つに語られる。翼ある獅子アンズーを紋章とし、妻はバウ。
解説
概要
ニンギルス(Ninĝirsu、「ギルスの主」)は、メソポタミアの神で、ラガシュ国家の主神である。ニヌルタと同一の神格とされ、両者は早くから習合した。
ニンギルスは、ラガシュ王グデア(前2144〜2124年頃)によって崇敬された。都市ギルスのエニンヌ神殿がその祭祀の中心であった。
神話・物語
ラガシュの王グデアが残した二つの粘土の円筒(ルーヴル美術館蔵)は、シュメール語で書かれた最も長い文学作品の一つで、グデアがニンギルスの神殿エニンヌを建てたいきさつを語っている。グデアは夢を見た。天のように、地のように巨大な者が現れた。頭は神、翼はアンズー鳥、下半身は洪水の嵐のようで、左右に獅子が伏していた。その者が神殿を建てるよう命じたのである。グデアは夢の意味を女神ナンシェに尋ね、ナンシェがそれを解き明かした。グデアは各地から材木や石を集めて神殿を建て、落成の日には、ニンギルスと妻バウが神殿に迎え入れられた。この記述は、シュメールの神殿の建築と祭祀のありさまを伝える、最も詳しい資料となっている。
ラガシュと隣の都市ウンマのあいだの国境をめぐる争いは、記録に残る最も古い戦争の一つであり、両都市の主神ニンギルスとシャラの争いとして語られた。エアンナトゥム王(前25世紀)の「禿鷹の碑」は、この争いでのラガシュの勝利を記念する。
図像と象徴
主画像は「禿鷹の碑」の神話面の断片(ルーヴル美術館蔵)である。髭を垂らした大きな神が、片手に獅子頭の鷲アンズーを掴み、その下に張った網には捕らえられたウンマの兵が絡め取られている。この神をニンギルスとみるのが通説である。
獅子頭の鷲アンズー(シュメール語でイムドゥグド)は、ラガシュの紋章であり、ニンギルスの象徴であった。後代のニヌルタの神話では、アンズーは神々の天命の書板を盗んで討たれる敵となる。
系譜と関係
ニヌルタと同一視される。父はエンリル、妻はバウ、ナンシェは姉妹。ラガシュと国境を争ったウンマの守護神はシャラである。
文化的足跡
グデアの円筒、グデアの座像、禿鷹の碑は、いずれも19世紀後半にフランス隊がギルス(現テッロー)で発掘したもので、ルーヴル美術館が所蔵する。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。