ネイロス
ニールス · ナイル · Nilus
ナイル川の河神でオーケアノスの子。娘たちがエパポスやベーロスに嫁ぎ、エジプト王家をギリシアの系譜に組み込んだ。ナイルの源流は古代最大の地理学上の謎であった。
解説
概要
ネイロス(Νεῖλος)は、ギリシア神話の神である。エジプトを流れるナイル川の河神で、オーケアノスとテーテュースの三千の子の一人にあたる。
娘メンピス、アンキノエー、アニッペー、エウリュッロエー、エウローペーの父である。
神話・物語
ナイル川に最初に言及したギリシアの詩人はホメーロスである。ヘーシオドス『神統記』では、オーケアノスの子である諸河のうち最初に名が挙げられている。ヒュギーヌスではトラーキアのストリューモーンに次いで挙げられる。ディオドーロスによれば、川の名はエジプト王ネイレウスに由来する。
古代にはナイル川について様々な言説があった。アトラース山の麓に三つの泉があり、その水は砂に消えるが再び現れてナイル川になるとか、メソポタミアのエウプラーテース川が地下を通って再びナイルとして現れるといった説である。あるいはナイルは大陸を取り巻くオーケアノスから流れ出ると考えられた。ナイルの源流は、古代を通じて最大の地理学上の謎の一つであった。
娘メンピスはエパポスの妻となり、リビュエーを産んだ。娘アンキノエーはベーロスの妻となり、アイギュプトスとダナオスを産んだ。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。ただしヴァティカン美術館のナイル像——横たわる老人の周りに十六人の子供が戯れる——は、ローマ期のナイル擬人像として最もよく知られる。十六人はナイルの増水の高さ十六キュビトを表すと解される。
ギリシア人にとって、ナイルは異国の川である。それをオーケアノスの子として自らの系譜に組み込み、その娘たちをイーオーの裔と結婚させることで、エジプトの王家がギリシアの神話体系に接続された。
関わる神格・伝承
父はオーケアノス、母はテーテュース。娘はメンピス、アンキノエーら。
エジプトの神ハピ——ナイルの増水の神——とは別の神格である。ギリシア人はエジプトのナイル崇拝を知りつつ、自らの河神の枠組みでこれを語った。
文化的足跡
ナイルの擬人像は、ローマ美術を経てルネサンス以降のヨーロッパ美術に受け継がれた。ローマのカピトリーノの丘には、ナイルとテヴェレの巨像が対で置かれている。
日本語圏では、ギリシア神話におけるナイルの神という位置づけは、あまり知られていない。