ムンディルファリ
ムンディルフェーリ · ムンディルフォリ · Mundilfari
太陽の女神ソールと月の神マーニの父。子に天体の名をつけた傲慢を咎められ、神々が二人を天に据えた。名は「定まった時に従って動く者」を意味するか。
解説
概要
ムンディルファリ(古ノルド語 Mundilfari、ムンディルフェーリとも)は、北欧神話の人物である。太陽の女神ソールと月の神マーニの父にあたる。
名はおそらく「定まった時に従って動く者」を意味する。
『古エッダ』の『ヴァフスルーズニルの言葉』第23節、および『ギュルヴィたぶらかし』第11章に現れる。
神話・物語
『ギュルヴィたぶらかし』によれば、ムンディルファリには二人の子があった。あまりに美しかったため、彼は息子をマーニ(「月」)、娘をソール(「太陽」)と名づける。
その傲慢さに神々が怒り、二人を天に据えた。ソールは太陽を牽く馬を御し、マーニは月の運行を司ることになる。
子に天体の名をつけたことが罰を招き、その罰によって子が実際に天体を司る者になる——名づけが現実になるという構成である。
『ヴァフスルーズニルの言葉』では、オーディンが巨人ヴァフスルーズニルに太陽と月の出自を問い、ムンディルファリがその父であるという答えを得る。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名の解釈が、この人物をめぐる議論の中心である。ジョン・リンドウは、第一要素ムンディル(mundil-)がムンド(mund、「一定の時間」)に関わるなら、この名は月を指すケニングでありうると述べる。ルドルフ・ジメクの説による。
「定まった時に従って動く者」——天体の周期そのものを名にした人物が、太陽と月の父とされている。北欧の宇宙観において、天体の運行は逃走として描かれる。太陽と月は狼に追われて空を駆けるのであり、その運行は逃げ続けることにほかならない。ムンディルファリの名は、その運動の規則性の側を担っている。
関わる神格・伝承
子はソールとマーニ。ソールの夫はグレン、御者としてアールヴァクとアルスヴィズの馬を駆る。
太陽と月を人格化し、しかもその父を置くという構成は、印欧語族の神話に広く見られる。ヴェーダのディヤウス、ギリシアのヒュペリーオーン——天体の親という位置に神格が置かれる例である。ただし北欧の場合、この人物は神ではなく人であるかのように語られる。
文化的足跡
日本語圏では、北欧の太陽と月といえばソールとマーニが挙げられ、その父の名が出ることはまずない。
それでもこの人物が伝えられているのは、太陽と月がなぜ空を巡るのかという問いに答えるためである。神話が天体の運行を説明するとき、しばしば必要とされるのは起源であり、起源には親が要る。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。